ジェイは、ナンシーが出て行くのを見届けるとマーカスのほうを向いた。 「お前気でも狂ったのか? 誰と羽目をはずしてもどうでもいいが、チャールズが好きな女を襲うのはやめろ。 トラブルの元だぞ」
「申し訳なかった、 ファンさん。 目の前にいる女が フーさんのお気に入りだと気づけるわけがないじゃん? 本当にすまなかった。 俺の過失だったよ。 どうか許してくれ」、とマーカスは謙虚に謝罪した。
「はあ」、ジェイはため息をついて首を振った。 「ほら、行くぞ。 もうどうすることもできないんだ。 まだ思い残しがあるなら警察に行けよ」
明らかにショック状態にあったナンシーは、 チャールズの車の中に黙って座り、ぼんやりと窓の外を見ていた。
「何があった?」 、単刀直入にチャールズがたずねた。
「遊びに来たらクズに会った」、ナンシーはなんでもなさそうに答えた。
しかしチャールズは観察力の鋭い男だったので、彼女が嘘を言っているのかどうかわかった。
彼は目をまっすぐ前に向けたまま黙っていたので、 彼らは無感情で薄情のように見えた。
ナンシーが何か隠していると疑って彼は気をもんだ。
「何をしたい? 散歩に行くか、一緒に映画でも見るか、家に帰る?」 チャールズは無表情のままだったが、その声には期待がにじんでいた。