豪華なオーダーメイドカーテンのタッセルが激しく揺れ、その隙間からなすすべもなく伸ばされた小さな手が、節くれ立った大きな手によって窓ガラスに強く押さえつけられた。
これで四度目だった。
男は一週間の出張で溜まった欲のすべてを、ぶつけようとしているかのようである。
相沢詩織が震える脚で泣きながら懇願して、ようやく男は恩寵を施すかのように解放した。
終わった後の余韻がまだ残る。背中越しに伝わる男の力強い心音が、心臓の芯を震わせた。
細かく執拗なキスが、まだ敏感なままの首筋に落とされる。
痺れるような感覚が、何度も繰り返し襲ってきた。
「まだいけるか?」
男の低く掠れた声には、からかうような蠱惑的な響きがあった。
彼女は体を横向きにし、男の首に腕を回した。
外の常夜灯の光が、男の冷徹な顔立ちを柔らかく染めている。
情欲に満ちたその瞳は、まるで全てを許すかのような深い情愛を湛えているかに見えた。
だが、彼女は知っている。
この男の心は、雪山の風よりも冷たいことを。
「明日、お見合いに行くの」
「ん」
男はこともなげに相槌を打った。
薄い唇が彼女の唇を捉え、ねぶるように貪る。
大きな手は彼女の細い腰を抱き寄せ、続きを始めようとした。
彼女の胸に苦い思いが広がる。
やはり……彼は気にも留めていないのだ。
再び煽られた体は微かに震え、
彼女は唇を噛んで喘いだ。
「もし良い人だったら、受けようと思う」
男の動きが止まった。
その深淵な眼差しが、冷ややかに彼女を見下ろした。
「結婚したいのか?」
「年末を過ぎたら、もう二十七歳になる。もう無駄な時間は過ごせない」
俯いた睫毛が表情を隠し、彼女は低い声で呟いた。
男の冷たく薄っぺらな唇端が描いた弧に、彼女は気づかなかった。
男は何の未練もなく体を離し、その直後、部屋の明かりが煌々と灯された。
彼女は少し慌てて、破れたドレスを掴んで胸元を隠した。
男はベッドの縁に腰掛け、煙草に火をつけた。
黒のスラックスは完璧なままで、黒いシャツのボタンが三つ開けられている。
その姿は妖艶で、性的だった。
彼女の視線は、煙草を挟む男の指に留まる。そこに嵌められた高級ブランドの婚約指輪が、部屋に満ちる甘い雰囲気をこの上なく皮肉なものに変えていた。
三年前、秘書に昇進したばかりの彼女が藤堂尚哉の出張に同行した際、ホテルの部屋で、男は彼女をベッドに押し倒した。
彼女は拒まなかった。一夜を共にした後、男は彼女の顎を掴み、「悪くない」の一言で、この三年にわたる関係が始まった。
昼は秘書、夜は愛人。
学生時代に一目惚れして以来の密かな恋心が、彼女を喜んでこの状況に甘んじさせていた。
しかし、彼はもうすぐ結婚する。人知れぬこの恋が、最後は『愛人』という惨めな結末で終わるのは嫌だった。
続けられないのなら、自ら去る人間になりたい。
視線を外し、彼女は自分のバッグを手に取ろうと歩き出した。
ここに来る時はいつも、着替えを準備している。
彼女に泊まる資格も、男の隣に立つ資格もないのだから。
伸ばされた白く細い手首が、不意に掴まれた。心臓が、きゅっと縮こまる。
「もう一回だ」
男は容赦なく、今度は半死半生になるまで彼女を貪った。