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初恋相手を選んだ夫に、この双子の存在は絶対に教えません

初恋相手を選んだ夫に、この双子の存在は絶対に教えません

5.0

望月結衣が大塚英志と結婚して、二年。彼女はわきまえた妻として、常に彼の意を汲み、細やかな気配りをもって献身的に尽くしてきた。 なぜなら彼女は、いつか必ず彼から別れを告げられる日が来ることを、痛いほど理解していたからだ。 けれど、その残酷な結末がこれほど早く訪れるとは、思いもしなかった。 大塚英志がずっと心に秘めていた最愛の女性、坂本真綾。彼女が帰国するや否や、彼は待ちきれないとばかりに一枚の離婚届を突きつけてきたのだ。 心は冷たく凍てつき、希望のすべてが灰に帰した彼女は、静かに背を向けて彼のもとを去った。 ――それから四年後。彼女は、愛らしい男女の双子を連れて再び舞い戻ってくる。 彼に見つからないよう細心の注意を払って身を隠していたにもかかわらず、運命は再び二人を無情に引き合わせてしまう。 血走った瞳で彼女を激しく見つめ、彼はすがるように告げた。「俺のそばに戻ってきてくれ。この二人の子供は、俺の実の子供として愛し育てるから」 双子たち:「…………」パパってば、もしかして目が節穴なの? だって自分たちの顔は、目の前にいる彼とどう見ても瓜二つなのだから!

目次

初恋相手を選んだ夫に、この双子の存在は絶対に教えません チャプター 1 彼女だけの子供

汐見市・宵ノ宮会館。VIP個室の中には、整った顔立ちの男たちが五人、座っていた。その中央で、一際目を引く美貌の男が、苦しげに眉をひそめ、深くうつむいている。どうやら酔いつぶれてしまったらしい。

「兄貴、どうしちゃったんスか? あんなに飲んじゃって」 一番左に座っていた男、広瀬翼が口を開いた。五人の末っ子である彼は、普段から能天気な性格で、この場の微妙な空気をまるで読めていない。

「坂本紗也が明日、汐見に着くそうだ」 言葉を引き継いだのは、線の細い、どこか陰のある男、坂本原愁。

「よくもまあ、戻ってこれたもんスね」翼が鼻で笑った。「兄貴、まさか未練たらしくて、より戻そうとか思ってるんじゃないッスよね? それじゃあ、お義姉さんはどうなるんスか?」

翼の言葉が終わると、誰も口を開かず、個室は一瞬で静まり返った。

しばらくの沈黙の後、原愁が再び口を開いた。「実はな、この二年、兄貴はずっと紗也のことを忘れられずにいたんだ。そうじゃなきゃ、結婚したことを一度も公表しないなんて、ありえないだろ? それに……」

彼は一拍置き、続けた。「お義姉さんが二年間妊娠しなかったのは、兄貴が彼女に大塚家の跡取りを産ませる気がなかったからだ」

「ガシャーン――!」

原愁の言葉が終わるか終わらないかのうちに、個室のドアの外から大きな物音が響いた。続いて、ウェイターの謝罪する声が聞こえた。「申し訳ございません、お客様! 大丈夫ですか?お着替えになられますか?お洋服が濡れてしまわれて……」

「あっ、お客様!お客様!」

声は遠ざかっていく。個室内の間接照明が、虚ろに明滅を繰り返した。やがて、翼が仕方なさそうにため息をついた。

「お義姉さん、いい人なんだけどなあ。兄貴も、紗也みたいな女にどうしてそこまでこだわるんスかね」

「まあいい。兄貴のことだ。本人に任せよう。俺たちがとやかく言うことじゃない。俺はもう行く。明日、出張があるんだ」

そう言って立ち上がったのは、三浦和哉だった。

「俺たちも先に出るわ。兄貴はお前に任せた」 坂本原愁と村上勝也が同時にそう言い残すと、あっという間に個室には翼と、酔いつぶれて意識のない男だけが残された。

……

望月結衣は、宵ノ宮会館からほとんど逃げ出すようにして飛び出した。

足元はふらつき、何度もよろめきながら、それでも必死に走った。

十分に距離を取ったところで、ようやく足を止める。乾ききっていない酒の染みも気にせず、道端の階段にへたり込むと、その場で嘔吐した。

「うっ……、うぅ……!」

しばらく空嘔きが続き、胃のむかつきがようやく収まるまで、しばらくかかった。

結衣は妊娠している。今朝、病院で結果を受け取ったばかりだった。

喜び勇んで、子供の父親である大塚英志にこのことを伝えようと彼を訪ね、そして、ついさっきの一部始終を聞いてしまったのだ。

吐き終えると、結衣は階段に座り込んだまま、無意識に自分の腹に手を当てた。この中に、小さな命が宿っている。まだ、それは信じられないような不思議な感覚だった。

最近ずっと食欲がなく、吐き気をもよおしていた。胃を悪くしたのだと思い、病院で検査を受けたところ、まさかの妊娠が判明したのだ。

検査結果の用紙は今もバッグの中にあるが、結衣には英志に見せる勇気がなかった。

なぜなら、英志が自分に子供を産ませたくないことを知っていたからだ。

二年前、祖父の治療のため汐見市を訪れた結衣は、大塚家の大塚明夫に出会った。二人の老人はかつての戦友であることを互いに認め合い、祖父は明夫の命の恩人でもあったため、その場は感動の再会に包まれた。

その頃、祖父の病状はすでに重く、結衣を明夫に託してこの世を去った。

戦友への想いと恩義から、明夫は結衣に英志との結婚を勧めた。結衣は、英志が幼い頃に密かに恋心を抱いていた少年だと気づき、一も二もなくその申し出を受けた。

だが後に、自分の想いとは裏腹に、英志には自分と結婚する意思など全くなかったことを知らされる。

結婚の夜、英志は一枚の契約書を差し出し、こう言った。「じいさんが死ぬ気で迫ってきてな。俺としても、あの老人の心を傷つけるわけにはいかない。大塚の妻の座はくれてやるが、それ以上は望むな。二年後にお前と離婚する」

契約書には、婚姻期間は二年間、子供はもうけないこと、離婚後、住んでいた別荘は結衣のものとし、さらに10億円を支払うことが明記されていた。

その瞬間、結衣は悟った。すべては、自分が一方的に思い込んでいただけなのだと。

結婚後、二人は明夫が用意した別荘で暮らし始めた。英志は他人に干渉されることを嫌ったため、家事はすべて結衣が担った。 彼女は仕事を持たず、ほぼ毎日、別荘で英志の帰りを待つだけの生活を送った。二人はごく普通の夫婦生活を営んだが、その度に、英志は必ず結衣に薬を飲ませた。

この子の存在は、きっと何かを変えてくれると、彼女は信じていた。

さっきまで、こうして個室の外で聞こえてきた会話を耳にするまでは。

(坂本紗也……)

英志が心の奥に秘め続けてきた女が、もうすぐ戻ってくる。そして、自分と彼との契約期間も、間もなく終わる。

(この子は、私だけの子供だ)

「ピロン――」

物思いにふける結衣のスマートフォンが、着信を告げた。

開いてみると、翼からのメッセージだった。

『お義姉さん、兄貴が酔いつぶれちゃったんで、迎えに来てもらえませんか』

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