主人公の彰は友人の哲郎とVRMMOのミリタリーシューティングをプレイするのがお気に入りの暇つぶしだった。そんなある日哲郎が自分の家まで遊びに来いと言い始めそれが発端となって非日常の出来事に巻き込まれていくお話です。
俺の名は彰、訳あって今は戦闘の最中だ。
今日のバトルフィールドは空港施設で、第1目標が管制塔の占拠、第2目標はハンガーと燃
料集積施設を徹底的に破壊すること。
オフェンス有利のセオリーどおりに俺たちは押しているが、飛行場守備隊も侮れなかった。
空港外縁の防衛ラインを捨ててハンガーのラインまで後退した彼らは対空用機関砲を持ち出
して反撃しようとしていた。
ザザッっという雑音を前触れにして哲郎の声がハンディートーキーから聞こえてくる。
「彰まずいよ、連中はレーダー管制付きの対空用機銃を隠していやがった。遮蔽物が少ない
からあいつで打ちまくられたら不利だ」
不利というのは婉曲な表現だ。
20ミリのガトリング砲で掃射されたら人間など原形をとどめない。
俺の手持ちの武器はAK47、通称カラシニコフと呼ばれている自動小銃だ。
その他には手りゅう弾2個とアーミーナイフ、アーミーナイフと言っても折り畳みの缶切が
ついているのではなくて、刃渡り20センチを超えるセラミック製だ。
このままでは非常にやばいと思い、俺は周囲を見回した。
敵勢力はハンガーからの機銃掃射による援護を当て込み、駐機場でAH64のエンジンを始
動していた。
そこは、哲郎が潜んでいる対爆シェルターのすぐ近くだ。
「哲郎。援護するから敵のAH64を盗れ」
「なんだって?」
哲郎がもごもご言っている間に俺はAH64の周辺にいる敵勢力を膝射で狙い始めた。
距離は300メートルで、着弾を見ながら修正すれば十分当たる。
スリーバーストで打つうちにAH64周辺の敵は一人、二人と倒れる。
弾倉が空になるまで射撃した俺は新しい弾倉にリロードすると物陰を伝ってAH64を目指
した。
当然敵も俺を狙い始めた。跳弾がその辺を飛び始めたのでそうやみくもに走ることもできな
い。
その時、黒い影がAH64に走り寄った。
哲郎だ。
哲郎の武装はUZI機関銃とコルトガバメントで、AH64周辺の敵は哲郎に背後をつかれ
て全滅した。
哲郎がAH64のエンジンパワーを上げて離陸する間に俺はどうにか200メートルほどの
距離を走り切り、前部座席に転がり込んだ。
AH64は通称アパッチと呼ばれる戦闘ヘリで、口径30ミリメートルの機銃を装備してい
る。
俺はハンディートーキーで哲郎に怒鳴った。
「ハンガーに機首を向けてくれ」
「わかってるよ。そうせかすな」
哲郎は飛行機系の操縦が得意だ。
アパッチはふわりと浮上すると機首を回し始めた。
俺は機銃用のスティックを操作する。
火器管制用のモニター画面にはハンガーから出てきた対空用機銃が映り込んだ。
スティックを操作して画面中央のドットが対空機銃に重なったところでトリガーを引く。
ブオーンという間抜けな発射音と同時にサイトの中の機銃は消し飛んでいた。
俺はスティックを操作して照準をハンガーの内部に移す。
「哲郎、今度は機首をゆっくりと右に振れ」
「注文の多いやつだな」
哲郎はぶつくさいいながらも俺のオーダーに答えてくれた。
滑走路上の低空から見るとハンガーの中に収納された飛行機は丸見えだ。
敵が大事に格納していた戦略爆撃機の機体が、哲郎が機首を振るにつれて照準に入ってくる。
俺がトリガーを引くと、爆撃機たちは次々と擱座し炎に包まれた。
「次は燃料集積所だ」
「いや見て見ろ、誰かがもう燃やしちまったみたいだぞ」
哲郎が言うとおりで目標の一つの燃料集積所は炎に包まれ、地下の燃料タンクから噴出する
燃料が炎の噴水を形作っている。
「それではこいつで管制塔に向かおう」
「了解」
哲郎がAH64で管制塔に向かおうとしたとき、俺の目の前にチームが勝利条件を満たした
ことを伝える表示が浮かんだ。
「AH64キターーーーーー」
「援護ありがとうwwww」
管制塔を占拠した連中のコメントが流れ始める。
「ちぇっ、これからだったのに」
俺がぼやくと、哲郎が笑った。
「ナイスアシストでポイントをがっぽりもらえるからいいよ。俺はもう落ちるわ」
その言葉と同時に哲郎の気配は消えた。
「俺がまだヘリに乗っているだろ」
AH64の前部座席でも操縦は可能だが、下手な操縦で機体を壊したら折角貯めたポイント
が減る。
俺は仕方なく「バトルソルジャー2」のVRMMO世界から離脱した。
ヘッドセットやグローブを外すとそこは何の変哲もない高校生のお勉強部屋だった。
哲郎も今頃自分の部屋でヘッドセットを外しているころだ。
哲郎は高校の同級生で毎日顔を合わせているが、VRMMOの中で同じチームを組んだ連中
は、時々ゲームの中で一緒に遊ぶもののリアでは会ったこともない。
ゲーム内ではアバターが表示されているから、街で会ったとしても、見分けることはできな
い。
その時、通信タブレットの着信音が鳴った。哲郎からのSNSメールだ。
「今から端末を持って俺の部屋に来ないか。その間端末の電源と、GPSの位置表示モード
は入れておいてくれ」
なんでやねんと俺は心の中でつぶやいた。
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僕の幼馴染みである春待青は、ちょっとおかしい。美少女だけど、他人の名前は覚えないし空気は読めないし、あとなんか手から氷を出したりする。笑いとシリアス、あやかしてんこ盛りのドタバタラブコメディー!