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第4章

文字数:1991    |    更新日時: 今日14:55

が、子猫のように暁の腕に絡みつき、わざとらしく報告する。その声色には、隠しきれない愉悦が滲んでいた。 暁の目が、鋭く細められる。 ちょうどその時、店員の木村が奥から戻ってきた。 「お客様、査定額ですが、六百万円で……」 木村は暁の存在に気づくと、怯えたように口をつぐみ、顔を青くした。 暁は、カウンターの上に置かれた指輪を、無造作に手に取った。光にかざし、皮肉な光を宿した

クタに執着するお前の姿は、本当に滑稽だ」 暁は、心の底から軽蔑しきった声で見下ろしながら、そう吐き捨てる。 凛は、踏みつけられた指輪を見つめていた。かつて、この指輪をはめてもらった時の、暁の優しい笑顔。甘い誓いの言葉。その記憶の全てが、今、この瞬間、完全に黒く塗りつぶされていくのを感じた。 ゆっくりと、顔を上げる。 暁への、かつて愛と呼んでいた感情が、完全に消え去った。そして、その空っぽになった場所に、底知れないほど冷たく、暗い憎悪が満ちていく。その決定的な瞬間を、凛は他人事のように冷静に自覚していた。 「……あなたは」 震える声で、凛は言った。 「人間の心を、持っていないのね」 静かな、しかし、刃物のように鋭い言葉だった。 暁の表情が、一瞬だけ険しくなる。だが、彼はすぐに冷たい仮面を取り戻し、鼻で笑った。 「お前が言うな」 暁が足をどけると、そこには無残に変形した指輪が残されていた。凛は、もうそれに触れようともせず、ゆっくりと立ち上がる。 店員の木村に向き直り、「もう結構です」とだけ告げると、凛は背筋を伸ばし、店の出口へと歩き出した。 胃の奥で、焼け付くような激痛が走る。凛は顔をし

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