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チャプター 5 浮上

文字数:6044    |    更新日時: 04/09/2022

それは、自然に発生するもの

動をとりながら、犠牲者を絡めとる。これに捕まった

ない様々な仕掛けがあり、流砂は何らかの理由で

の探索者であれば容易であったがまだ若いユスチィスには荷が重く、大蛇から

ガーソンたち。既に流砂は機能を失っており

ちの毛皮をかすめる。人一倍寒さに

キサリナの様子を横目でちらりと見やると、破損した鉄版の文面

れに、間もなく大蛇が獲物を探す時頃だろう。一旦

、う

片を押しのけた状態のまま動きを止める。やがて、トンガーソンは微かな震えが全身

ガーソ

、トンガーソンに訴えかける。キサリ

弱々しくケルエヴィンの方へ向けなが

って姿を変え続けている砂丘であるが、こうして己の眼で見ている間は、万物が静止しているかの如ぎ静けさ

ていたトンガーソンであったが、己の身体には相当な疲労

ずとらえどころのないものであったが、キ

がままで、無理はさ

の片隅で、諦念に近い感情が沸き起こる。老

ロウたちにも伝えよう。皆を集め

、ケルエヴィンとキサリ

作業を中断し、仲

のか、初めは全く理解できていなかった。記憶は途方もなく遠い過去へ置き去りにされ

人には、心を許せるということ。彼の存在が、自分に優しい人の感触

りを想起させる。生きているという感覚――人間が感

は重くて動かせなかった四肢もある程度は自由

ために用意されたと言っても差し支えなかった

る隣人がいなければ、この牢獄のような静け

少女の周りには大勢の人間がいた記憶があり、彼女は自分がとても大事にされた気がして

中で一つの部品が融解し、明るみに出た。少女は咄嗟に芽生えた衝動に

間の顔や声は濁った白い靄に隠されて判別できなかったが、綺麗な白い手の滑らかな動きだけははっきりと認

されるかのように、隣人を押し

体――いや、その形状は丸みを帯びた長方形に折れ曲がった四本の棒が取り付けられ

眼前でうずくまる人間の姿を気の抜けた様子で見つめていたが、

あった。パニックに陥ったが、それは彼女自身が未だ気づいていない、先史文明人の生き

た際に恐怖で怯えることもなく、己の課され

込まれたテントを張り、散らばっていた仲

暗闇に浸食される、薄暮の揺らめきが地上を僅かに照ら

食の準備を始めており、キサリ

なっていた、トートサを溶かした吸

は強い毒が含まれていたが、長時間煮込んでから紫外線に当てることで毒

あるが、ハトロドは石のように固く、獣の毛皮のような分厚い種皮

に踏み入ってきた。タンムルは、まだ少し硬いハトロドの皮を丹

マガナさんのご容態

と目を合わせる。キサリナは戸惑いを隠せずに

まだ、遠出はできないけれ

いに訪れていた。アルマガナが人払いをしていたので、ア

を追い返すような形になってしまった経緯もあり、

出していました……博士の好きな、

、それは

ナが好んでいた花で、一般的には黄色や紫色をしていたが、アルマガナは独自の研究

人から譲りうけたという青い花のエネーシアの種で、珍しい野生種だった

な……わたしが持って

え、それ

キサリナに言付けしていたのだ。だが、キサリナは、タンムルがわざわざ持参した珍しい花の種を捨

植えのエネーシアも芽を出しており、それを見つめるアルマガナの、嫌悪感を

喜んでいる。キサリナは罪悪感で胸を締め付けられ

の心の中は未だ動揺していて、その時タンムルが喋った話の内容はほとんど耳に入ってこなかった。タンムル

なった気がした。苦しくなっていた呼吸も楽になる。心なし

ナが最も敬愛する、師であり実の母のような存在でもあったアルマガナが、最も毛嫌いしている人物でもある。そ

の準備も終わりそうだから、皆を

ィンだった。ケルエヴィンは周囲に気

所に集まっていた方が、もしもの

辺にはユスチィスとトンガーソンを襲っ

そうです

周りの若者たちに軽く一礼をしてから、周辺に張ら

室であった。ユスチィスたちが部屋に入ると、少し遅れて天井の照明が稼働を開始し

は、ぴったりとユスチィスに寄り添っていた。パンナカァラの肌は冷たかったが、ユスチ

かれているよ

っているとはいえ、大蛇の声帯から発せられる言葉は、

……長い……孤独……解

かった。不審に思うユスチィスを尻目に、大

、なにをす

深い、地の底から。キミ

すって

重い響きを伴い、ユスチィスのつま先か

で転びそうになっているパンナカァラの様子が

起こっているんだ

地上に向かって上昇している―

然の出来事

初に気づいたのかは定かでない。元々、旧鼠は音や振動などに敏感で

いで伸び上がっていく。その過程で、柱は振

ンガーソンやタンムルが率先して皆に指示

た調査隊の面々は、遺跡の所々に点在する砂上の広間

ら、月光を反射させる銀色

これは

のことに茫然となった。

の先史文明の頃から色あせていない、途方もな

面によって押し上げられていく。上にいた旧鼠たちは次々に転倒し、

現れた遺跡の全貌は、さながら巨大な白銀の要塞と呼べる代物

て。まだ

収まってなお、何か巨大な物体が大地を震撼

察していた。この遺跡を再度訪れる羽目に

外殻が中空に伸び上がり、発達した二本の長い

、その場にいる誰

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