夜の帳が下り、出張先で少し酒を飲んだ清葉は、本来ならもう眠っているはずだった。しかし、目を閉じると、親友の佳奈子の言葉が360度サラウンドのように頭の中で繰り返される。
「恋愛って、マジで言葉にできないくらい素敵なんだって!若いうちに素敵な人を見つけて、ちゃんと向き合いなさいよ!
無理なら無理で、自分から動くのもアリだからね。恥ずかしがるこたない。この私が、いつでも相談に乗ってあげるわよ!」
あの時、自分は何と返したのだったか。
思い出せない。
清葉はホテルのベッドに横たわっていた。酔いのせいで整った顔は赤らみ、海藻のように豊かな長い髪が枕に広がる……。
あと一ヶ月で26歳になる。もう立派な大人の女性だ。しかし、これまで一度も彼氏ができたことはなく、ファーストキスもまだ。そういうこととなると、なおさら経験がない。
実は、佳奈子からこんな話を聞くのは初めてではない。彼女は毎日、恋愛の話を口にしている。だが、今日に限って、その言葉が自分の体の中に眠っていた欲望を呼び覚ました。酒の勢いも手伝って、体が熱くなり、眠りにつくことができない!
清葉は寝返りを打ったが、まだ何かが込み上げてくるような感覚が消えない。いっそ、と体を起こした。
無意識に乾いた唇を舐め、手探りでスマートフォンを掴む。コンタクトレンズを外し、酒もかなり飲んでいたため、画面がはっきり見えない。LINEの表示で最初の文字が「藤崎」であるのを確認し、タップして開いた。
「寂しい。誰か話し相手がほしいな」
相手からの返信は早かった。ただ、疑問符が一つ送られてきただけだ。
清葉は美しい眉をひそめた。酔いの勢いで、少し大げさだったかもしれない。「もう、ノリが悪い!眠れなくて寂しいんだってば。来てくれてもいいんだよ?こっちは1501で一人ぼっちで待ってるから〜」
最後に、赤い唇の絵文字を添えた。
メッセージを送った後、清葉はしばらく返信を待ったが、一向に来ない。ベッドから降りて水を飲もうと体を起こした、その時、ドアベルが鳴った――。
彼女は深く考えずにドアへ向かった。まさか佳奈子が、本当に真夜中に部屋を訪ねてくるはずがない!
ドアを開けた瞬間、清葉の酔いは半分ほど覚めた。
「藤崎……藤崎社長?」
彼は風呂上がりらしく、濡れ髪がしずくを滴らせ、墨色のシルクガウンをまとっていた。緩く結ばれただけの帯のせいで、深く切れ込んだ鎖骨が露わになり、そこに刻まれた漆黒の数字のタトゥーが、嫌でも目に飛び込んでくる。
視線をさらに下に移すと、腹筋がうねるように伸び、最後は人魚線へと消えていくのがかすかに覗く。
あまりにも長身で、ほとんどドアを塞いでしまうほどだ。彫りの深い端正な顔は半分が闇に沈み、その瞳は、普段の冷たくよそよそしい光を失い、長く飢えていた獣が、ついに獲物を捕らえた、そんな目だった。
「私に何か……うっ!」
彼女が言葉を言い終える前に、後頭部を大きな両手にがっちりと固定され、残りの言葉はすべて奪われた。
清葉は、彼の口の中からも酒の味を感じた。自分のものとは違うが、それが混じり合っていく……。
天地がひっくり返るような感覚の後、彼女はベッドに押し倒された。白いナイトドレスに混じる墨色のガウンが、視覚的に無限の想像力をかき立て、部屋に艶めかしい空気が満ちていく。
時也は明らかにひどく酔っているようだった。そうでなければ、あの盛時財団の総裁が、どうして自分のような末端のアシスタントの部屋にやって来るだろうか?
無意識に二、三度もがいた後、清葉はふと動きを止めた。考えてみれば……自分の初めてが、これほどハンサムで、金と権力を持つ男に捧げられるのなら、損ではない!
彼は自分が誰であるかなど覚えていないだろう。かつて自分が彼の中学の同級生で、一年近くも隣の席だったことさえ覚えていないのだから。
一夜限りの関係に過ぎない。自分の直属の上司でさえ、会社で彼と顔を合わせる機会はほとんどない。ましてや、自分のような立場の人間が、翌日「藤崎時也と寝た」と言ったところで、誰も信じはしないだろう。
数秒躊躇した後、窓から差し込む月明かりの下、彼女は勇気を振り絞って彼の首に腕を絡めた。
やがて、その部屋の灯りが消えた。