「今日は積極的だな、どして?」
荒井心咲の脚は男の引き締まった腰にゆるく絡みつき、目尻は情欲で赤く染まっていた。
内田蒼海の問いかけを聞いて、彼女は彼に噛みつきながら、喉元を震わせて妖艶に笑った。「なんでもないわ、ただ会いたかっただけ」
蒼海の切れ長の目がスッと暗くなり、瞳の奥の欲望がさらに深まった。
二つの体は隙間なく重なり合い、激しく貪り合う。大きな手が彼女の肌を縦横無尽に這い回り、いくつもの艶めかしい赤い痕を残していった。
心咲は確かに気晴らしがしたくて、この若い”彼氏”を呼び出し、酒を飲ませて体を重ねたのだった。
だが、蒼海が今日はここまで激しいとは思わなかった。
普段ならせいぜい二、三時間で終わるのに、今日は息も絶え絶えになるまで翻弄され、彼の首筋に顔を埋めて泣きながら許しを請うしかなかった。
終わった頃には、シーツはすでにひどく濡れてしまっていた。
心咲は腕を上げる力すら残っておらず、布団の中でぐったりと震え続けていた。
蒼海が顔を寄せ、彼女の耳たぶにキスをした。 「もう一回?」
普段はクールで禁欲的な顔なのに、ベッドに上がった瞬間、まるで狂犬のように変わって、彼を丸ごと食べ尽くしそうな勢いだった。
心咲は彼を相手にする気力もなく、それなりの力で彼を蹴った。「嫌よ」
蒼海は低く笑い、優しく甘い声で言った。「じゃあ、抱っこしてお風呂に連れて行こうか?」
若くてイケメンな男にこうして優しく世話されるのは、心咲にとって願ったり叶ったりだった。
別の女に心を寄せている夫の荒井颯真を見ているより、よっぽど楽しい。
実は結婚した時から、彼女は知っていた。颯真が「義妹」の明智星乃に心を寄せていることを。
彼女が彼と結婚したのも、元々は明智家の継承権を手に入れるためだった。
明智家と荒井家の間には以前から婚約が取り決められていて、その相手である颯真に嫁ぐのが彼女でなければ、継承権など到底手に入らないからだ。
だからこそ、この三年間、彼女は歯を食いしばって耐えてきたのだ。
だが数日前、星乃にわざとらしく「うっかり」と赤ワインをかけられ、堪えきれず平手打ちをしたところ、颯真はその女のために烈火のごとく怒り、彼女が進めていた重要案件をわざと潰したのだ。
その代償として、彼自身も億単位の損失を被った。
心咲にはどうしても腑に落ちず、蒼海の蠱惑的な切れ長の瞳を見つめながら、思わず尋ねた。「男って、みんな恋愛脳なの?」
蒼海は一瞬呆然とした後、手を伸ばして彼女を腕の中に抱き寄せた。 「どうして急にそんなことを聞くの? あのクズ旦那がまた何かした?」
心咲は気だるげに彼の胸に寄りかかり、頷いた。
彼女は最初から、自分が既婚者であることを蒼海に隠してはいなかった。
何しろ、二人が出会ったのは彼女の結婚式の日だったのだから。
颯真は手首を切って自殺を図った星乃に付き添うため、結婚式の最中、迷わず彼女を置き去りにした。
当時まだ若気の至りだった心咲は、どうしても腹の虫が収まらず、バーでやけ酒をあおり、ついでに一番背が高くてイケメンのホストを選んだ。「夫に浮気されたの。私に囲われてみない?」と持ちかけたのだ。
事実、彼女の目は確かだった。
「あいつに何されたの?」
男は彼女をさらに強く抱きしめ、低い声で言った。 「教えて、俺が代わりに仕返ししてあげるから」
心咲は笑った。
蒼海のこういう気遣いは本当に完璧だけど、バーのホストがどうやって仕返しするっていうの?
「俺の一存で荒井家なんて潰せる」なんて言えちゃうような、そんな傲岸不遜なCEOでもあるまいし。
心咲は彼にキスをして、ついでに小切手帳を取り出した。 「いいのよ、蒼海。 私たち、別れましょう」
彼女は小切手にサインをしたが、金額は記入しなかった。「いくらでも好きなだけ書いて。あなたへの補償のつもりよ。あのマンションと車もあげる」
「これからはもう会わないようにしましょう。 私たちの関係も、誰にも言わない方がいいわ」
蒼海の顔色が沈み、彼女の腰に回していた手にふいに力がこもった。
「勝手に決めるなよ」
心咲は眉をひそめた。この可愛い年下彼氏、怒っているの?
正直、こんなに従順なベッドパートナーを手放すのは、彼女としても惜しかった。
だが今回ばかりは、あのクズ・颯真に心の底から吐き気がした。
これ以上、元々名ばかりのこの結婚生活を続けても、他人に笑われるだけでなく、自分で自分が浅ましく思えてくるだけだ。
だが、たとえ離婚したとしても、蒼海とこれ以上深い付き合いをするつもりはなかった。
男なんて所詮は暇つぶし。これ以上深入りして、あんな愚かな恋愛脳になりたくはなかった。
「少し飽きたわ」
心咲は本当の理由を説明するのも面倒になり、小切手を彼の胸に叩きつけると、ベッドから起きて服を着ようとした。
だが、蒼海は彼女の手首をきつく掴んで離さなかった。
「最初はそっちから誘ってきたくせに、今は飽きたの一言で、簡単に俺を追い払うつもりか?」
男の瞳の奥に、凍りつくような怒りが湧き上がった。「荒井心咲、俺をなんだと思ってるんだ?」