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THE END OF THE WORLD ー世界の果てにて…ある少年の物語ー

THE END OF THE WORLD ー世界の果てにて…ある少年の物語ー

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あらすじ

目次

2110年。 第三次世界大戦終結後、仮想空間オンラインゲーム「FRONTIER」が世界中の若者たちを中心に大ブームを起こしていた。世は戦後という状況で格差社会を生み、大日本帝国は4つの財閥が経済や政治の権力を握り、国民の生活は戦勝国にもかかわらず苦しいものになっていた。 そんな時代の中に生まれたシーナは、戦中に両親を失い戦争遺児となってしまい施設で育った。 戦争遺児とは時代が落とした負の遺産。 国から様々な恩恵が受けられる遺児は、心無い人々からやっかみや差別の対象となっていた。 そんな過酷な幼少期を過ごした15歳のシーナは2120年、施設の仲間と出かけた電気街でカツアゲされ暴行を加えられてしまう。 鼻血を垂れ流し動けないシーナに手を差し伸べる男ヒデ。 その手を掴んだシーナは仮想空間オンラインゲーム「FRONTIER」へと導かれた。 この「FRONTIER」でプレイしていく中でシーナは絶望的な人生であった自分の運命と向き合う。 大切な仲間ができ、恋をして、シーナは少年から大人へと成長していく。 そして「生きていく」ことを受け入れ仲間たちと大きな目標に向かって走り出す。 それは世界中でクリアされたことのない【虐殺の門】と呼ばれる最終フィールドをコンプリートすること。 これはシーナの目線で進む物語。 多感な年ごろの彼の感情や葛藤を読者と共有していく未来型青春群像劇。 【FRONTIER】 ーフロンティアー プレイヤーは【ステーション】と呼ばれる端末接続場にて【ダイブ(脳神経と端末のシンクロ)】する事によりゲーム内の仮想空間内部にて戦技を競う。 今世紀、不安定な政治状況下の中、世界中で熱狂的ブームをお越している。 近未来、ネットワーク体感ゲーム“FRONTIER”が人々を魅了していた。若者たちは電脳世界の戦いに自らを賭け戦いに明け暮れていた。 ゲームミッションをこなす中で少年はやがてこの世界の謎と直面することとなる。 果たして、現実と虚構の狭間にうごめく“FRONTIER”の恐るべき秘密とは!? そこには現実を越える真実が待っていた。

チャプター 1 プロローグ

プロローグ

2120年

もう何年このステーションに通っているだろうか…。ほぼ毎日といっていいほど、ここから仮想空間へダイブしている。近代的なビルの中にある無数のブース。このブースは約2メートル四方の小さな薄暗い部屋。空調の静かな音しか聞こえない。その真ん中にリクライニングシートがあり、その横にはモニターが光る端末機器が繋がっている。俺はその端末にIDカードを差し込む。するとブースのドアから『カチッ』と音がし、ロックされたことを確認する。これで外の世界とは一切遮断された空間が出来上がった。羽織っていた上着を壁にあるフックにかけ、リクライニングに横たわる。俺は一連の作業を当たり前のようにこなして、仮想空間へ飛ぶために、端末からコードが伸びるヘッドギアとリストバンドを体に装着し目を閉じる。一瞬の混濁が襲い、体が宙に浮くような錯覚を感じる。そして目を開けると、そこは・・・戦場だ。俺がダイブした場所は、FRONTIER(フロンティア)。仮想空間のオンラインゲームだ。

『ヘイ!!シーナ!!退路の確保は大丈夫だろうな!?』

インカムから自動通訳で聞こえてくるフランス人の怒号。

俺は、本来いるべきフォワード、いわゆる前衛ではなく最後方で退路の確保にあたっていた。3年間雇用されていたパーティーが解散。フリーの傭兵で生計をたて始めてから、最近はこんな仕事ばかりだった。

『シーナ!!撤退だ!!フォワードが二人ともリタイアしちまった!!セーブポイントまで誘導を頼む!!』

今回招聘されたパーティーのリーダーの焦った声が再びインカムから聞こえてきた。俺は暇潰しに『ニホントウ』でザコキャラを倒しながら、細かいポイント稼ぎをしていたが、パーティーリーダーの声でやっと本来のミッションタイムがやってきた事を知り、背中のに刀を納めた。

(R-Bフィールドでこのザマとは…。)

R(ランク)がB(B級)であるこのフィールド。

(フラッグにもたどり着けずに撤退か…。)

ため息をひとつ漏らした俺は肩に掛けていたM4を構え、撤退してくる今日だけのパーティーの援護に回った。

R-BフィールドNO24。

200年前のポーランドの市街戦をモチーフにしたフィールド。フィールド内には第二次世界大戦時に占領していたナチス軍が、パーティー達を待ち構えていた。もちろんそのナチス軍の兵士達は、ゲーム内の敵キャラである事は言うまでもない。ざっと見る限りフィールドには我らの他に7パーティー程が接続しているようだ。この規模のフィールドであれば接続の上限は20パーティー。

フラッグ(最終目的)はフィールドの1番奥にある敵陣営の征圧であるが、我がパーティーは途中の機関銃部隊によってフォワード二人を同時にリタイアする事態に陥ったようだ。M4を連射しながら帰還してくるリベロと、パーティーリーダーであるスナイパーの退路確保作業を始めた。二人と合流して、しばらく撤退すると、突然辺りが暗くなり、すぐに新たなフィールドが現れた。フィールドチェンジ。このゲームは幾つものフィールドを繋ぎ合わせてひとつのステージを造っている。ここまでくればセーブポイントは近い。ミッションが成功しようが失敗であろうがセーブしなければ、今回のミッションはまったく無意味となってしまう。だからリタイアした二人はセーブができないから経験値すべてをもらう事ができず、ミッション途中で撤退した二人は個人の経験値のみでコンプリートした時に発生するパーティーポイントは獲得できない。ただ俺のような傭兵は、あらかじめパーティーと契約したミッションをこなせばそれでいい。今回の契約は、パーティーをセーブポイントに誘導すること。すなわちパーティーリーダーと共にセーブポイントに入る事で、その条件は満たされ、端末に差してある俺のIDカードに自動的にミッションボーナス(報酬)が入る。フラッグを達成する事が最終目的ならば俺のような役割はいらないが、フラッグを達成してセーブポイントに戻る事が最終目的である以上、退路確保と言うのは極めて重要なポジションと言える。フラッグとの戦いで深いダメージを負ったパーティーをスムーズにセーブポイントへと導く事がミッション・コンプリートへの近道なのだパーティーリーダーが俺に詫びる。

『すまない。お前程のハイプレイヤーを招聘するからにはコンプリートしたかったんだが…。』

俺は軽く頷いてセーブポイントへ駆け込んだ。

目覚めた俺は、すぐにヘッドギアを取り、手首のリストバンドを無造作に外し、リクライニングシートから起き上がった。わずか2メートル四方の薄暗い個室にリクライニングシートがひとつ。現実の世界への帰還である。シート横のモニターには今回のミッションの経験値と報酬が映し出されていた。それを確認して端末機からIDカードを抜く。すると扉のロックが解除される。そして、掛けていた上着を羽織り外へ出た。まだ夜明け前の『ステーション』だが人がごった返している。俺の出た個室もすぐに端末待ちのプレイヤーが入り、扉の上にある接続中の意味の赤いランプが光っていた。FRONTIERの端末は

仮想空間へとダイブするのだ。海外のパーティーと組む時は、大概この深夜の時間にステーションで過ごす事になる。

ロビー奥の何台も並ぶ銀行のATMのようなキャッシャーにIDカードを入れ、パスワードを入力。今回の経験値はパラメーターにはあてず、の弾の補給にあてる。

ミッション成功時のパーティーポイント25%が今回のミッションの報酬だ。だがフランスのパーティーはミッション失敗に終わっているから、俺への報酬分がパーティーの資産からマイナスされるのだろう。このパーティーポイントは経験値化にも現金化にもでき、パーティーリーダーがメンバーに経験値を振り分けたり、次回の端末使用料など、その時々の判断で活用される。俺はキャッシャーから出てくる紙幣を無造作にジーンズのポケットに突っ込み、足早にステーションを後にした。

まだ薄暗い午前4時。帝都の電気街はまだ人通りはほとんどない。

むしろこの時間にこの辺りをうろついているのはFRONTIERのプレイヤーか路上生活者しかいないだろう。俺は始発まで少し時間があるのを確認し、駅前の牛丼屋に入った。俺はいつからこんな生活を送るようになったのか…。

今から10年前に終結した第三次世界大戦。事の発端は、大韓民国と北朝鮮の第二次朝鮮戦争である。

戦時中、母を病気で亡くし、父は軍医として沖縄基地に派遣されていたが死亡が伝えられ、姉と俺は戦争遺児の集まる施設へと送られた。

2110年1月。アメリカが中国主要都市に核爆弾を5発投下。結果的に16年にも及んだ第三次世界大戦は北朝鮮と中国の降伏により終結した。

俺は一般高等学校に進み、この春、三流ながら大学に入学した。戦争遺児は成人(修学)するまであらゆる免除があり、学費や医療費は無料。月々給付金の恩恵も受けられる。俺がFRONTIERと出会ったのは中学を出てすぐだった。

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