東雲朔(Shinonome Saku)の小説・書籍全集
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妹扱いされた私を、今さら愛さないで
帰国して3年ぶりに再会した彼女は、交際の駒のように扱われ、彼のベッドへと送り込まれた。 一夜を共にしたものの、彼はまるで相手が誰なのか気づいていなかった。 新しい自分に夢中になっていく彼に対し、彼女は真実を打ち明けることを選ばず、こっそりとメッセージを送り、かつて彼が約束した婚約はまだ有効なのかと問いかけた。 「ずっと妹のように思っていただけだ」 冷たい言葉が少しずつ心を刺し貫く。「言葉にしたのは、ただ君が安心して海外で治療に専念できるようにするためだった。もう帳消しだ。これから先は連絡を取らないでくれ」 彼女は黙ってスマホを閉じ、10年にわたる想いを断ち切った。 しかし、去ろうとするその日、彼は涙で目を赤くし、彼女の足元に跪いて必死に願った。 「お願いだ……行かないでくれ。君は俺と結婚するって言ったじゃないか……」 彼女は冷ややかにその手を振り払う。「そう言ったのはあなた。私のことを“妹”としか見ていなかったのは、あなた自身よ」