田中 海斗の小説・書籍全集
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血に染まる羽衣
母様は、天上の仙女であった。 父様のために人間界に留まり、一つの美談として語り継がれた。 けれど私だけが知っている。母様は全ての法力を司る羽衣を奪われ、無理やり人間界に留められていたことを。 7歳の時、私は深夜に母様の部屋の扉を叩いた。 母様は服もろくに纏えず、ぐったりとした様子で皇帝である父様の腕の中に横たわり、屈辱に唇を噛んでいた。 母様は私を抱きしめ、言った。「阿狸、早くお逃げ。決して戻ってきてはなりません」 その後、母様は血塗れで私の腕の中に横たわり、晴れやかで、痛快な笑みを浮かべた。 「阿狸、母さんが助けてあげられるのはここまでよ」 「残りの道は、あなた一人で進むのよ」 私は母様の亡骸を抱きしめ、手の中の小刀を固く、固く握りしめた。 「母様、ご安心ください」 「すぐに奴らをあなたの元へ送って差し上げますから」