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結婚記念日が復讐記念日になるなんて

結婚記念日が復讐記念日になるなんて

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結婚記念日、私はふと思い立って、夫の古いスマホを使って思い出の動画を作ろうとした。 ところが電源を入れると、メモ帳アプリが自動で開き、最新の記録が目に飛び込んできた。タイトルは「赤ちゃんの成長記」。 「今日は私たちの子の生後1か月の日。ママのつわりがひどくなっていて、とても心配。 パパは君のためにかわいいワンピースをたくさん買ったよ。早く出てきて着せてあげたいな」 差出人は――私の夫。 けれど、私は妊娠なんてしていない。 動揺しながら、仕事中の夫に電話をかけた。「あなたの古いスマホのメモ、あれはどういうこと?」 一瞬、向こうの呼吸が止まった気がした。だがすぐに軽く笑って言う。「それか。友達の奥さんが妊娠してね。書き留める場所がなくて、俺のスマホをちょっと借りただけなんだ。」 私は笑って「そうなの」と答え、電話を切った。その後すぐ、スマホのアルバムの「最近削除」フォルダを開き、消されていた1枚のエコー写真を復元した。 そのエコー写真には、「某さん」という女性の名前がはっきりと印字されていた。私はそれを見つめ、微笑みながら――義母の番号に直接電話をかけた。

目次

第1章古いスマートフォン

結婚記念日だった。ふと思い立って、夫の古いスマートフォンで思い出のビデオを作ろうとした。

電源を入れると、メモ帳が自動的にポップアップした。最新メモのタイトルは「ベビーダイアリー」。

「今日は僕たちの小さな芽が生後一ヶ月になる日だ。ママのつわりがひどくなっているみたいで、胸が痛む。 パパは可愛いワンピースをたくさん買っておいたから、生まれてきたら着ようね」

差出人は、夫の周翰。 しかし、私は妊娠などしていない。

職場にいる夫に電話をかけた。「あなたの古いスマホのメモ、どういうこと?」

電話の向こうで、彼が息を呑むのが分かった。すぐに、何でもないことのように軽く笑う。「ああ、あれか。友達のだよ。奥さんが妊娠したんだけど、書く場所がないからって俺のスマホにメモしたんだ」

私は笑って「そう」とだけ答え、電話を切った。そして、アルバムの「最近削除した項目」を開き、一枚の削除されたエコー写真を復元した。

そこに記された「許さん」という名前を指でなぞり、私は微笑みながら、そのまま姑に電話をかけた。

........

「お義母さん、周翰に外の子供ができたみたいです」

電話の向こうで、姑の甲高い声が裏返った。「なんですって!?」

エコー写真を握りしめる指先は氷のように冷えていたが、私の声は自分でも驚くほど穏やかだった。「写真によると、もうすぐ妊娠三ヶ月。男の子だそうです」

姑は黙り込んだ。

それは衝撃による沈黙ではない。共犯の陰謀が暴かれる寸前の、死のような静寂だった。

三十秒は経っただろうか。彼女は再び口を開いたが、その声の調子は百八十度変わっていた。まるで施しを与えるかのように、私をなだめようとする口ぶりだ。

「小雅、まずは落ち着いて」

「男なんて、所詮は下半身で考える生き物よ。たまに過ちを犯すのも仕方ないじゃない」

「それに、あなたと周翰が結婚して三年、お腹に何の音沙汰もないんだもの。彼だけを責めるのは酷でしょう」

「私たち周家は三代続く一人っ子なの。彼の代で血を絶やすわけにはいかないのよ」

「知ってる?周翰はよその子を見るたびに、家に帰ってきては一人で泣いているのよ」

白を黒と言いくるめる彼女の言葉に、私は怒りを通り越して笑いさえ込み上げてきた。

「つまり、お義母さんのお考えでは、私が子供を産めないから、彼は外の女に代理で産ませて当然、ということですか?」

「そんな言い方しなくてもいいじゃない」

姑は何でもないことのように言い流したが、その声には隠しきれない喜びの色が滲んでいた。

「もう三ヶ月近いのなら、それは私たち周家の初孫よ。大事にしないと」

「安心して。あなたが物分り良く、騒ぎ立てさえしなければ、子供が生まれたら周翰はちゃんとあなたの元へ帰ってくるわ」

「周家の奥様という地位は、永遠にあなたのものよ」

「その子は私たちが引き取って、あなたが育てればいい。どうせあの女はただの道具なんだから」

「そうだ、もう名前も考えてあるの。周承志。周家の血を受け継ぐっていう意味よ」

彼女は口先だけの約束を並べ立て、私がそれに感謝すべきだと言わんばかりだった。

私はもう彼女との無駄話を打ち切り、単刀直入に尋ねた。「その許さんという女性、お名前は?」

姑は私のあまりの直接的な物言いに意表を突かれたのか、一瞬言葉に詰まり、そして口を滑らせた。「許婉晴よ。なかなか……って、どうして彼女が許という姓だと知っているの?」

ようやく状況を理解したのだろう、彼女の声に警戒の色が混じった。

私は静かに笑った。

「お義母さん。あなたは本当に、私の『良い』お義母さんですね」

「ところで、周翰は毎月、許婉晴に100万円を送金していませんか?」

「そのお金、私の両親が遺してくれた遺産から出ていますよね?」

電話の向こうで、姑の息が荒くなるのが分かった。

電話を切る。手の中のエコー写真に記された「許婉晴」の三文字が、姑が今しがた口にした名前と、完璧に重なった。

なるほど。私が最後に知ったわけではなかった。

ただ私だけが、何も知らされずにいた愚か者だったのだ。

スマートフォンのアルバムを開き、周翰と私の結婚写真を見返す。 写真の中の彼は、私の腰を抱き、満面の笑みを浮かべている。

同じ日に撮られたもう一枚の写真に写る彼は、許婉晴の肩を抱き、さらに輝くような笑みを浮かべていた。

スマートフォンが震えた。周翰からのメッセージだった。

【ハニー、今夜は何が食べたい? 早く仕事を切り上げて、君のために作るよ】

オフィスで撮った自撮り写真が添えられていた。その優しい笑顔と甘い眼差しは、三年前、私が彼に恋した時とまったく同じだった。

あのメモを見つけなければ、私は一生、彼に騙され続けていたかもしれない。

【ええ、嬉しいわ。煮込みが食べたいな。あなたの手作りの】

彼は即座に返信してきた。【お安い御用さ、僕の女王様】

私はスマートフォンを置き、親友に電話をかけた。

「一人、調べてほしい人がいるの。許婉晴。それと、周翰のこの三年間のお金の流れを全部。彼の両親のも含めて」

「それから、私の両親の交通事故の真相も調べて」

電話の向こうで親友が口笛を吹いた。「一家皆殺しでもするつもり?」

「ううん」 私は窓の外を見つめ、冷たい眼差しで言い放った。「あの人たちを、丸裸で叩き出すの」

「犯した罪の代償を、きっちり支払ってもらう」

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