ルナは偶然、ニューヨーク最大のマフィアの後継者、リアムを救った。
噂では、彼は残忍非道で、ベッドの上では悪魔に豹変するという。
だが、そんな男がルナには心から跪き、ハイヒールを履かせた。彼女が痛がるのを恐れ、ベッドでも常に優しく触れるばかり。その鬱憤を晴らすため、彼は性奴隷を飼うしかなかった。
しかし、リアムがその奴隷に代理出産させることを決めた時、すべてが変わった。
.......
ニューヨーク最大の暗黒街の後継者リアムを偶然助けたルナは、この街で最も幸福な女だった。
”ゴッドファーザー”となったリアムは、彼女を天にも昇る心地にさせた。
彼はルナと結婚し、盛大な結婚式を挙げた。 ルナが薔薇を好きだと知れば、数十億を投じて薔薇の荘園を贈った。
裏社会で絶大な権力を握るリアムは、稀代の遊び人としても有名で、彼と夜を共にした女は三日三晩起き上がれないとまで言われた。
だが、ルナに対してだけは格別に優しかった。彼女に苦痛を与えるのは忍びないと言い、その代わりに地下室で性奴隷を飼い、鬱憤を晴らしていた。
子供を作ることに関しても、彼は解決策を用意していた――奴隷による代理出産だ。
リアムはルナを抱きしめ、慰めた。「ハニー、エレナは単なる『産む道具』だ。 あの子が産まれ次第、俺たちの世界から消してやる」
ルナは彼の真摯な瞳を深く見つめ、同意した。
だが、リアムは日ごと性奴隷のエレナと溺れるようになっていった。ルナを顧みず、屋敷中にエレナの甲高い悲鳴と命乞いの声を響かせ、ついには結婚三周年の記念日にも姿を見せなかった。
その日、ルナが深夜まで待っていると、地下室から声が聞こえてきた。
スーツを完璧に着こなしたリアム。その下では、雪のように白い肌を晒したエレナが、顔を真っ赤にし、リアムの狂気じみた動きを受け止めていた。
「言え!なぜ逃げた?」彼はエレナの首輪を掴んだ。そこには、リアムの名が金色に刻まれている。
覗き見ていたルナは、きつく下唇を噛んだ。以前、彼がひどく酔った夜のことを思い出す。
ルナが寝るまで付き添っていると、リアムは彼女をエレナと間違え、抱きしめてきたのだ。「エレナ、お前を永遠に地下室に閉じ込めてやる。二度と逃げようなんて考えるな。お前は永遠に俺の犬だ、分かったか?」
涙が制御できずに溢れ出す。ルナは必死で声を殺した。
彼女には分かっていた。リアムは、もうエレナを愛してしまっている。
「エレナ、俺の子を産め。お前のすべてを俺のものにしたい」 情欲に駆られた彼は彼女に覆いかぶさり、その背中に情熱的な瞳で無数のキスを落とした。
激しく責め立てられたエレナは、口元から唾液を垂らしながら振り返った。「ええ。でも、奥さんはどうするの?」
リアムは笑い、動きを止めずに言った。「あいつと結婚したのは命を助けられた恩返しだ。もう三年だぞ。とっくに飽きてる」
その言葉を聞き、ルナの視界は涙で滲んだ。彼女は顔を覆い、その場から逃げ出した。
リアムと過ごした甘い日々、そしてこの数年間、世間から寄せられた羨望の言葉が脳裏をよぎる。すべてが、ひどく皮肉に思えた。
三年前、リアムは敵対組織に追われ、偶然彼女の家に逃げ込んだ。ルナが彼を匿うと、あろうことかリアムは薬を盛られていた。その夜、彼はルナの抵抗を無視し、その服を引き裂いたのだ。
それはルナの初めてだった。もっと優しくしてと懇願する彼女の耳元で、リアムは嗄れた声で囁いた。「君は俺を救った。俺は君にすべてを与えよう。ニューヨークで一番幸福な女にしてみせる!」
今、彼女はゆっくりと指輪を外し、暖炉の火の中へ、一切の躊躇なく投げ入れた。
そして、涙を拭った。
暖炉のそばに立ち、燃え盛る炎の中で溶けていく指輪を静かに見つめる。すべては、自分に見る目がなかったせいだ。彼女は、リアムとのすべてに終止符を打つことを決意した。
誰にも知られることなく、彼女は「死」を偽装する組織に電話をかけた。
【ルナ様。申請は受理いたしました。新しい身分の構築に着手しており、三日後に完了予定です】
ルナは携帯電話を強く握りしめた。
残された時間は、三日間。それが過ぎれば、彼女とリアムは赤の他人となる。