ホームページ / 都市 / 魂だけが知る残酷な真実
魂だけが知る残酷な真実

魂だけが知る残酷な真実

5.0

私の魂は, 手術台に横たわる自分の体を見下ろしていた. メスを握るのは, 私が愛した男, 光登. 彼は私の腎臓を彼の想い人のためにえぐり出すと, 冷たく言い放った. 「残りは処分しろ」 その時, 彼は私のお腹にかすかな膨らみを見つける. そこには彼の子供が宿っていた. それでも光登は躊躇わず, 私の体を硫酸のプールへ投げ込んだ. 彼を救うため片方の腎臓を捧げ, 彼の子供を身籠った私だと, 本当に, 本当に気づいていなかったの?

目次

第1章

私の魂は, 手術台に横たわる自分の体を見下ろしていた.

メスを握るのは, 私が愛した男, 光登. 彼は私の腎臓を彼の想い人のためにえぐり出すと, 冷たく言い放った. 「残りは処分しろ」

その時, 彼は私のお腹にかすかな膨らみを見つける. そこには彼の子供が宿っていた.

それでも光登は躊躇わず, 私の体を硫酸のプールへ投げ込んだ.

彼を救うため片方の腎臓を捧げ, 彼の子供を身籠った私だと, 本当に, 本当に気づいていなかったの?

第1章

松永翔世 POV:

私の体は, 簡素な手術台の上に冷たく横たわっていた.

まだ, わずかなぬくもりが残っていたけれど, それはもう私のものではなかった.

周りの人々は, 私の存在にまるで関心がなかった.

彼らの視線は, 無機質な器具や, 次に何をすべきかを示す指示書に向けられていた.

私の魂は, 宙を漂い, この信じられない光景をただ見下ろしていた.

ひんやりとした空気が肌を撫でる.

誰かが私に近づいてくるのが分かった.

手には, 鈍く光るメス.

その人物は私の胸に手を置いた.

まるで彫刻家が傑作を完成させるかのように, ゆっくりと, そして精密に, 私の胸郭を切り開いていく.

血がにじみ, 鮮やかな赤色が白い布に滲んでいく.

痛みはなかった.

ただ, すべてを冷徹に見つめているだけだった.

「腎臓は一つだけか…? 」

その声が聞こえた時, 体の奥底で何かがざわめいた.

私は, その言葉の意味を理解した.

そして, その驚きが, 彼らにとってはただの事実確認でしかないことに, 深い絶望を感じた.

しかし, 彼の手は止まらなかった.

迷わず, 次の作業へと移る.

その手つきは, あまりにも熟練していて, あまりにも冷酷だった.

彼の専門性が, 私をさらに非人間的な存在へと貶める.

温かい血に染まった臓器が, 私の体から抜き取られた.

それは, まるで宝石のように, 特別な容器に入れられた.

ガラスの向こうで, 私の体の一部が脈打っているのが見えた.

皮肉にも, それは私自身よりも, ずっと生き生きとして見えた.

「これをすぐに病院へ. 移植の手配をさせろ. 」

彼の声は命令だった.

その臓器が, 誰かの命を救うために使われるのだと分かった.

だが, その「誰か」のために, 私の命が奪われたのだという事実が, 私の心を締め付けた.

「残った方はどうしますか, 光登さん? 」

もう一人の声がした.

健吾の声だった.

私の魂は, その声に反応して, 彼の顔を見上げた.

彼の表情には, かすかな戸惑いが見えたけれど, それはすぐに消え去った.

「こんなもの, どうせ誰も探しに来やしないさ. 身元不明の死体だ. 警察に連絡しても, 面倒が増えるだけだ. 」

光登は冷たく言い放った.

その言葉が, 私の魂を深く切り裂いた.

私は, 彼にとって, もうただの「もの」でしかなかったのだ.

健吾は, 少し不満そうな顔をしていたが, 光登の言葉に逆らうことはできなかった.

光登は, 血に濡れた手を洗い流した.

その顔には, 一切の感情が宿っていなかった.

まるで, ただの日常業務を終えたかのように, 淡々としていた.

「念のため, 処分してしまえ. 」

彼の声は, 疲れているように聞こえた.

だが, その言葉には, 深い冷酷さが潜んでいた.

私の体は, 彼にとって, もう何の価値もない, ただの邪魔な存在だった.

健吾は, 光登の言葉に納得できないようだったが, 何も言い返せなかった.

彼は, 私の体を, まるでゴミのように扱う光登の姿を見ていた.

私という存在は, あの時, 完全に消え去った.

ただの「胴体」として扱われ, その残骸すらも, 彼らの手によって消されようとしていた.

臓器だけが, 彼らにとって価値のあるものだった.

健吾の疑問は, 光登によって一蹴された.

彼の目には, 私への軽蔑と, 深い無関心しかなかった.

私の魂は, そこで, すべての希望を失った.

「念のため, 処分してしまえ. 」

その言葉が, 私の最期の記憶となった.

続きを見る
img レビューを見る
更新: 第23章   昨日14:48
img
img
第1章
15/12/2025
第2章
15/12/2025
第3章
15/12/2025
第4章
15/12/2025
第5章
15/12/2025
第6章
15/12/2025
第7章
15/12/2025
第8章
15/12/2025
第9章
15/12/2025
第10章
15/12/2025
第11章
15/12/2025
第12章
15/12/2025
第13章
15/12/2025
第14章
15/12/2025
第15章
15/12/2025
第16章
15/12/2025
第17章
15/12/2025
第18章
15/12/2025
第19章
15/12/2025
第20章
15/12/2025
第21章
15/12/2025
第22章
15/12/2025
第23章
15/12/2025
ManoBook
アプリをダウンロード
icon APP STORE
icon GOOGLE PLAY