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蓮音の安全を最優先しろ——そう言って、あなたは私たちの子を救わなかった

蓮音の安全を最優先しろ——そう言って、あなたは私たちの子を救わなかった

5.0

結婚して3年、夫の上杉大晴は、初恋の相手・白石蓮音に狂っていた。 私が交通事故に遭い、妊娠2ヶ月で大出血し、生死の境をさまよったあの日—— 病院の血液は、すべて夫によって蓮音のもとへ回された。 医師が「奥様と赤ちゃんの命が危ない」と食い下がっても、彼は冷たく言い放った。 「蓮音の安全を最優先しろ」 その電話の向こうで、命を繋ごうとしていたのが私だとは、彼は知らなかった。 私の子は、実の父親に——知らぬままに——命を断たれた。 絶望の果て、私は密かに綴ってきた『訣別の日記』を、ついに最後の頁まで書き終えた。 離婚届を机に置き、私は彼を捨てて大阪へ向かった。 ——これからは、自分の人生を生きる。

目次

蓮音の安全を最優先しろ——そう言って、あなたは私たちの子を救わなかった 第1章

結婚して3年、夫の上杉大晴は、初恋の相手・白石蓮音に狂っていた。

私が交通事故に遭い、妊娠2ヶ月で大出血し、生死の境をさまよったあの日——

病院の血液は、すべて夫によって蓮音のもとへ回された。

医師が「奥様と赤ちゃんの命が危ない」と食い下がっても、彼は冷たく言い放った。

「蓮音の安全を最優先しろ」

その電話の向こうで、命を繋ごうとしていたのが私だとは、彼は知らなかった。

私の子は、実の父親に——知らぬままに——命を断たれた。

絶望の果て、私は密かに綴ってきた『訣別の日記』を、ついに最後の頁まで書き終えた。

離婚届を机に置き、私は彼を捨てて大阪へ向かった。

——これからは、自分の人生を生きる。

第1章

―― 川端花純 ――

夫は初恋の相手を追いかけ、私と子を殺した。訣別の日記は、まもなく最後の一頁を迎える。

結婚して3年目、夫である上杉大晴は、私、川端花純を愛していなかった。私の無償の愛を当たり前のように受け取り、初恋の相手である白石蓮音に夢中だった。私はその絶望の中で、密かに「訣別の日記」をつけていた。彼への想いを綴るためのものではない。私がこの結婚を終わらせる日まで、心がもつように——そう願って始めた、失望の記録だった。一頁、また一頁と、彼の裏切りを書き留めるたび、私の心は少しずつ冷えていった。

ある日、その日記をソファに置き忘れた。大晴が帰宅し、それを見つけた。しかし、彼はそのノートを拾い上げることすらなかった。ちらりと一瞥しただけだった。彼にとってそれは、ただの紙くずだった。

彼は私に言った。

「かすみ、俺の書斎には私物を置かないでくれ。」

彼の書斎。そこには蓮音との思い出の品が溢れていた。初デートの映画の半券、初めてプレゼントしたネックレス、蓮音が描いた絵画。すべてが大切に飾られていた。私自身の私物など、そこに置く余地はなかった。置く資格もないと、彼は無言で語っていた。

私は気づいていた。大晴は私の存在を完全に無視している。しかし、彼は私たち夫婦の関係が、いつ破綻してもおかしくない状態にあることなど、夢にも思っていないだろう。それは、私にとって皮肉であり、同時に悲しい事実だった。私は日記を握りしめた。これ以上、この婚姻関係を続けることはできない。

その日の夜、大晴の携帯電話が鳴った。緊急の電話だった。蓮音が事故に巻き込まれたという内容だった。大晴の顔色が一瞬で変わった。彼は血相を変え、急いで家を飛び出した。

私は彼の後を追った。彼が蓮音のためにどれだけ狂っているのか、この目で確かめたかった。事故現場はひどい状態だった。崩れた建物の瓦礫が散乱し、煙が立ち込めていた。大晴は危険を顧みず、瓦礫の中に突進しようとした。周りの人々が彼を止めようと叫んだ。

「上杉さん! やめてください! 危険です! あなたの将来にも関わります!」

しかし、大晴は彼らの言葉を聞き入れなかった。

「蓮音のためなら、すべてを捨てる!」

彼は叫んだ。その声には、狂気にも似た愛情が込められていた。

私はその場に立ち尽くした。周りの人々の話が聞こえてきた。

「上杉さんは昔から白石さんに執着していたからな。」

「次期社長の座まで捨てて、あの人のレストランの支配人になったんだろ?」

私はその会話を聞き、ようやく理解した。彼の初恋。それは、私が想像していたよりもはるかに深く、彼の中で生き続けていた。私はずっと彼の愛を信じていた。それらすべてが、蓮音への執着から来るものだったと知った。私の胸が締め付けられた。呼吸が苦しくなった。吐き気が込み上げてきた。

大晴は瓦礫の中から蓮音を救い出した。しかし、自身も負傷し、その場で倒れてしまった。救急隊員たちが駆けつけ、彼らを病院に搬送した。

私は、私たちの初めての出会いを思い出した。大学のキャンパスで、偶然ぶつかり合ったあの日。彼が私にプロポーズしてくれたときの言葉。

「かすみ、君と結婚したい。」

あの時の彼の瞳は、私にだけ向けられていると信じていた。しかし、今思えば、あのプロポーズも蓮音との関係が絡んでいたのかもしれない。

私は、彼が蓮音を深く愛していることを知りながらも、諦めきれずにいた。いつか、彼が私を見てくれる日が来るはずだと、日記に希望を託していた。しかし、失望の記録は増える一方だった。彼の無関心、蓮音への偏愛、そして私の存在の軽視。この日記が最後の一頁に辿り着く時、私の結婚生活も終わる。その時が、もうすぐそこまで来ていた。

私はまだ知らなかった。彼の無関心が、やがて私の命そのものを奪うことになるとは。

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更新: 第23章   昨日18:55
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