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お見合い相手は見知らぬ男で、私を狂信する大富豪!?

お見合い相手は見知らぬ男で、私を狂信する大富豪!?

5.0

お見合い当日、太田舞は見知らぬ男性とスピード結婚をした。 結婚後は互いに敬意を払う平凡な生活を送るものだと思っていたが、 予想に反して、夫は片時も離れようとしない甘えん坊だった。 さらに彼女を驚かせたのは、困難に直面するたびに彼が現れ、すべての問題を見事に解決してしまうこと。 問い詰めても、彼はいつも「運が良かっただけ」と答えるばかり。 そんなある日、彼女は愛妻家として有名な彩星市トップの資産千億の大富豪のインタビューを目にし、その顔が自分の夫と瓜二つであることに驚愕する。 妻を狂おしいほどに溺愛する大富豪——彼が愛してやまないその妻とは、ほかならぬ彼女自身だったのだ。

目次

お見合い相手は見知らぬ男で、私を狂信する大富豪!? チャプター 1 ただ一緒に暮らすだけ

彩星市の十月は、まだ人をうだらせるほど暑い。秋の気配を感じられるのは、朝晩くらいだった。

舞は朝早くから姉一家三人分の朝食を作り、居間に散らかった玩具を片づけ、床を拭いた。それから蒸しパンを二つと戸籍謄本を手に、そっと姉の家を出た。

「これからは生活費も、住宅ローンも車のローンも、全部折半だ! お前の妹がうちに住んでいるなら、あの子にも半分出させろ。月に四万円ぽっちで何になる? ただで食わせて、ただで住まわせているのと変わらないだろ」

これは昨夜、姉夫婦が口論したときに、義兄が口にした言葉だ。

姉の暮らしをこれ以上めちゃくちゃにしないためにも、舞は姉の家を出なければならない。姉を安心させるには、結婚するしかなかった。

短期間で結婚するなら、恋人もいない舞に残された道は一つしかない。やすこさんの頼みを聞き、結婚に縁のない一番上の孫、斉藤大智と結婚することだった。

階下へ降りて表通りに出ると、ちょうど路線バスが停まっていた。舞は駆け寄り、彩星市役所を通るとわかるや、発車寸前のバスに飛び乗った。

窓際の席を選んで座り、バスが動き出してからは車窓の街並みを眺め続けた。

彩星市は栄えた大都市だ。通りの両側には高層ビルが立ち並び、街は活気に満ちている。

二十分後、舞は彩星市役所前でバスを降りた。

「舞ちゃん」

舞の耳に、聞き慣れた呼び声が届いた。やすこさんだ。

「やすこさん」

舞が駆け寄ると、やすこさんの隣に背が高く、端正で冷ややかな男が立っていた。これから婚姻届を出す相手、斉藤大智だろう。

近づいて顔がはっきり見えると、舞は思わず目を見張った。

やすこさんの話では、一番上の孫の大智は三十歳だというのに、結婚に縁がなく、恋人一人つくれない。やすこさんが気を揉んでいたある日、身分を隠して一人で出かけたやすこさんは道で転び、舞に助けられて病院へ運ばれた。それが二人の出会いだった。

親しくなってから、やすこさんは舞の人柄をすっかり気に入り、舞が二十五歳になっても恋人がいないと知ると、大智との縁談を持ちかけた。

舞はずっと、三十歳にもなって恋人ができない大智は、さぞかし顔の悪い男なのだろうと思っていた。やすこさんの話では、大手グループの幹部で収入も多いというのだから。

仕事もできて稼ぎもある男が独り身なら、よほど理想が高くて相手を選ぶか、さもなければ金目当ての女にすら見向きもされないほどの不細工か。そのどちらかだ。

舞は、大智は後者だと思っていた。

ところが実際に会ってみると、前者だった。大智はひどく整った顔立ちで、まとった空気は冷たい。やすこさんの隣で不機嫌そうに立つ姿は妙に様になっていて、誰も寄せつけない気配を漂わせていた。

少し離れた場所には、黒いワゴン車が停まっていた。エンブレムは東風で、数千万円もする高級車ではない。そのことに、舞は自分と大智の距離もそう遠くない気がした。

姉と甥が離れがたくて、舞は厚かましくも姉の家に居候を続けていた。だが、収入は悪くない。昔からの同級生である親友と、彩星中学校の門前で書店を営んでいる。

彩星中学校は小中高一貫の名門校で、生徒と教職員を合わせて一万人近い。教材や文房具の需要は大きいが、周囲には書店がひしめき、競争も激しかった。

暇な時間には、手編みの小物をネットで売ることもあり、売れ行きも悪くなかった。

一か月の売上から店の経費をすべて引き、残った利益を友人と折半する。そこにネットショップの収入を足せば、舞の月収は安定して四十万円を超えていた。

彩星市なら、月収四十万円もあればホワイトカラー層の仲間入りだ。

ただ、義兄は舞の収入を知らず、書店は儲からないと思い込んでいた。競争が激しいからと、何かにつけて舞を疎ましがっている。実際には舞は毎月、食費と家賃として姉に十万円を渡していた。

しかも舞は抜け目がなく、その半分は姉に貯金させ、義兄には内緒にしていた。

姉は舞の収入をおおよそ把握しており、無駄遣いはせず、二年後には家を買えるよう貯金しなさい、安心して暮らせる場所を持ちなさいと、いつも言い聞かせていた。

「舞ちゃん、こちらが私の一番上の孫、斉藤大智。三十にもなってまだ売れ残ってる独身男だけど、少し無愛想なだけで、細かいところにもよく気がつくし優しいんだよ。舞ちゃんは私の命の恩人だし、知り合ってもう三か月になる。信じてちょうだい。ろくでもない孫を押しつけたりしないから」

祖母にそう評された大智は、舞を一瞥した。深く冷たい目を向けたきり、何も言わない。

身内の祖母に散々言われて、もう慣れっこなのだろう。

やすこさんには三人の息子がいて、息子たちはそれぞれ三人ずつ子どもをもうけた。孫は男ばかり九人で、孫娘はいない。命を救ってくれた舞とは気も合い、やすこさんは舞を本当の孫娘のように可愛がっていた。

「やすこさん」

舞の頬は赤らんだ。それでも気後れせず大智に右手を差し出し、笑顔で名乗った。「斉藤さん、初めまして。太田舞です」

大智は鋭い眼差しで舞を頭のてっぺんから爪先まで見て、今度は足元から顔へ視線を戻した。祖母が軽く咳払いして促すと、ようやく右手を差し出し、舞と握手を交わす。低く冷えた声が落ちた。「斉藤大智」

握手を終えると、大智は左手の腕時計に目を落とした。「俺は忙しい。手短に済ませよう」

舞は「うん」とだけ返した。

やすこさんは慌てて口を挟んだ。「二人とも、さっさと中へ入って手続きをしておいで。私はここで待っているから」

「ばあちゃん、車の中に入ってろ。外は暑い」

そう言いながら、大智は祖母の背を支えて車まで連れていった。

その様子を見て、舞はやすこさんの言葉にも納得した。大智は無愛想だが、気が利いて優しい。

舞と大智はまだ赤の他人だ。それでも、やすこさんの話では大智名義の、しかもローンのない家があるという。結婚すれば姉の家を出られ、姉も安心できる。これ以上、自分のせいで姉夫婦が言い争うこともなくなる。

この結婚は、ただ一緒に暮らすだけのものだ。

ほどなくして、大智が舞のところへ戻ってきた。「行こう」

舞は「うん」と短く返し、黙って大智のあとについて彩星市役所の中へ入った。

婚姻届の窓口で、大智は舞に念を押した。「太田さん、もし気が進まないなら、まだ考え直せる。祖母に何を言われたって気にするな。結婚は大事なことだ。軽い気持ちで決めるものじゃない」

大智は、舞に考え直してほしかった。

そもそも結婚する気などさらさらない。ましてや、今日初めて会った見知らぬ女性を妻にするなど、考えられなかった。

舞は祖母が話していた通り、若くてきれいで、落ち着いた知的な雰囲気もある。それでも、二人は赤の他人だ。

幼い頃は両親が仕事で忙しく、大智は祖母に育てられた。祖母にとても孝行な孫だったため、何度もせがまれて、仕方なくここまで来たのだ。

「一度引き受けた以上、今さら取り消す気はありません」

舞も何日も考えた末に決めたのだ。決めた以上、もう後戻りはしない。

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