「1088番、渡辺望央、もう行っていいぞ」
鉄の扉が背後で轟音を立てて閉まった。
渡辺望央は刑務所の門の前に立っていた。三年ぶりに見る陽の光が眩しくて、目頭が熱くなった。
生き返ったみたいで、本当にいい気分だわ!
前世、両親が突然、私と同い年の久保田安子を連れて帰り、あの子こそが自分たちの本当の娘だと言った。
私は一夜にして、偽りの令嬢に成り下がってしまったのだ!
三年前、安子の手術が失敗すると、久保田家の人間は全員が安子の味方につき、私に罪を被るよう強要し、結託して私を刑務所へと送り込んだ。
刑務所の中で、私は人間以下の生活を送っていた。ご飯にはガラスの破片が混ざり、布団にはカミソリの刃が隠され、服に隠れて見えない部分の痣は一度も治ったことがなかった。
最後には生きたままなぶり殺しにされた。
死の間際、血まみれで床に倒れ伏す私を安子が見下ろし、赤ん坊の取り違えなど、ただの作り話に過ぎないと告げたのだ!
私の実の両親は、占い師の戯言を信じ込み、私が家族全員を死に追いやる災いの星の下に生まれたと思い込んだ。
そこで、久保田家の運気を高める宿命を背負う安子を連れて帰り、本物と偽りの令嬢という嘘をでっち上げ、私を偽りの令嬢に仕立て上げ、一歩一歩絶望の淵へと追い詰めたのだ。
そして、ずっと私を痛めつけていた囚人たちも、安子が金で買収して手配した者たちだった。
怨念が深すぎたのか、なんと私は入所して三年目の時期に時を遡って戻ってきた。
「望央」
苛立った声が響き、私がゆっくりと振り返ると、背後に立つ男の姿が見えた―― 久保田家の長男である久保田将暉、私の名目上の兄だ。
「行くぞ。父さんも母さんも家で待ってる」
私は見て見ぬふりをし、足を止めることなく、そのまま彼の横を通り過ぎた。
将暉は眉をひそめ、手を伸ばして私の行く手を遮ると、冷ややかな口調に見下すような傲慢さを滲ませて言った。
「また何の癇癪を起こしているんだ?安子は子供の頃、お前の実の両親のせいでひどく苦労したんだ。お前が彼女の代わりに三年刑務所に入ったからって、それがどうした?」
実の両親?
私の口元に皮肉な笑みが浮かんだ。
「久保田将暉」私の眼差しは凍りつくように冷たかった。「あなたたちが私に久保田安子の罪を被るよう強要した時から、私はもう久保田家に何の借りもないわ」
「よく聞いて。今日から、私は久保田家と完全に縁を切る!」
将暉は顔色を急変させ、手を上げて私を引っ張ろうとした。
「刑務所に入っても懲りないのか?出てきたばかりで何を狂ったことを――」
彼の言葉はエンジンの音にかき消された。
流線型のボディを持つ漆黒のマイバッハが音もなく視界に滑り込み、私の横に停まった。
将暉は胸を締め付けられた。
桜京8888。
これは……桜京市一の富豪である渡辺家の車だ!
渡辺家がこんな人里離れた刑務所の門前に何をしに来たというのか?
あれこれ考える間もなく、車の窓が下がり、運転手が恭しく頷いた。「渡辺様、ご乗車ください」
将暉は一瞬自分の耳を疑い、目を見開いて勢いよく私を見た。
私はすでに彼と無駄話をする気もなく、車のドアを開け、身をかがめて車内に乗り込んだ。
マイバッハは素早く走り去り、血の気の失せた顔のまま、その場に立ち尽くす将暉だけが残された。
望央はいつ渡辺家と関係を持ったというのだ?!
「渡辺様、こちらが渡辺若旦那との婚姻届です」
運転手は恭しくその書類を差し出した。
私はそれを受け取り、背もたれに寄りかかって目を閉じた。
渡辺若旦那、渡辺洋史、桜京市で最も権力と影響力を持つ男。
裏社会と表社会の両方を支配し、神秘的で予測不可能な人物だが、数ヶ月前に突然奇病を発症し、意識不明の重体となっている。
病状は日に日に悪化しているが、渡辺家は名医をあちこち探し回っても成果を得られずにいた。
さらには、洋史を救うことができた者には、渡辺家との縁組を許すという情報まで流していた。
前世で私が死んだ後、安子は私が残した解毒の処方箋を盗み出し、洋史の命を救った。
久保田家はそれ以来飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進し、安子に至っては渡辺家に嫁ぎ、栄華を極めた。
今度の人生では、私は刑務所の中で事前に渡辺翁に手紙を書き、自分が洋史を救えると明言し、それと引き換えに自身の早期出所を求めた。
渡辺翁は案の定それを承諾し、さらには直接私と洋史に婚姻届を出させたのだ。