マカロンひめの小説・書籍全集
私が死に、そして再び生きた日
鈴木亜矢は息を求め、胸をかきむしった。まるで万力で締め付けられるように、息ができない。 六歳の息子、蓮が恐怖に青ざめた顔で母を見つめている。 アナフィラキシーショック。 急速に、悪化していく。 亜矢は夫である健司の名をかすれ声で呼び、119番してと懇願した。 「ママが、息できないの!」蓮が電話に向かって叫ぶ。 しかし健司は、愛人の詩織との「会合」の真っ最中で、「またパニック発作だろ」と気にも留めなかった。 数分後、彼から電話がかかってきた。亜矢のために呼んだはずの救急車は、今、詩織のもとへ向かっているという。詩織はただ「転んで」足首を捻挫しただけなのに。 亜矢の世界が、粉々に砕け散った。 蓮は、その小さな心で英雄になろうとした。助けを求めに外へ飛び出したが、車にはねられた。 鈍く、吐き気を催すような衝突音。 亜矢は、自分の悲劇の中で幽霊のように、ただ見ていた。救急隊員が、小さく壊れた蓮の体にシーツをかけるのを。 息子は死んだ。健司が詩織を選んだせいで。 絶望。恐怖。罪悪感。 蓮の姿が、焼き印のように魂に刻み込まれる。 どうして父親が、夫が、これほどまでに鬼畜のように自己中心的なのだろうか。 苦く、魂を蝕む後悔が彼女を苛んだ。 詩織。いつも、あの女が。 その時、亜矢ははっと目を開けた。 彼女はリビングの床に倒れていた。 蓮が、元気な姿で駆け寄ってくる。 それは恐ろしく、ありえない、二度目のチャンスだった。 あの破滅的な未来は、決して起こさせない。 自分の人生を取り戻し、息子を守り、そして、あの二人には必ず報いを受けさせる。
ロボットの私は、誕生日だけ生き返る
彼氏に「君は不死身なんだろう?お願いだ、命を彼女に譲ってくれ」と頼まれ、私は承諾した。 でも彼は知らない。命を譲ったその瞬間、私は本当に死んだということを。 けれど、大丈夫。私にはシステムがある。 彼が私の誕生日を一度祝ってくれるたび、私は一年間だけ生き返ることができる。 彼はかつて約束してくれた。「毎年、ずっとそばにいるよ」と。 来週が、私の誕生日だ。システムは言った――私は機械の体としてこの場所に残り、復活の時を待てと。 でも彼は、私のことをきれいさっぱり忘れていた。 誕生日当日、彼は“本命”と手を取り合い旅行に出かけ、婚約のニュースはSNSのトレンドに躍り出た。 彼から届いたメッセージ。「彼女は体が弱いんだ。結婚式を挙げることで、最後の願いを叶えてやりたい。だから……頼むから騒がないでくれ」 ――私は騒がない。死人がどうやって騒げる? でも、私の機械の体を見たとき、騒ぎ出したのは彼のほうだった。取り乱して、まるで狂ったように。
