千早縁の小説・書籍全集
欺瞞の結婚
結婚して五年目のこと。家畜の競り市で、私は夫と従姉妹の姿を見つけた。誰もが五年前に死んだと信じていた女。 彼女はその腕に、二人の息子を抱いていた。 私の結婚生活のすべてが嘘だったと、すぐに分かった。私を殺そうとした女を守るため、夫と、そして私の実の祖母が仕組んだ、完璧な隠蔽工作。 私は妻なんかじゃなかった。ただのアリバイだったのだ。 彼らが息子の誕生日を祝うために、私に薬を盛ろうと計画したその日、私は一族の財産のすべてを放棄し、離婚届にサインし、姿を消した。
臨時の父親、永遠の後悔
七年ぶりの再会。彼女は75kgから40kgまで痩せ、名前も変えて、かつての元夫にまったく気づかれなかった。 彼が重病に倒れ、命を救うには彼女の血が必要だった。 差し出された千万の報酬を拒み、彼女が出した条件はただひとつ――「娘の父親を1か月だけ務めてほしい」。 彼は深く考えることもなく承諾する。 しかしその後、本命のために遊園地の約束をすっぽかし、 親子運動会にも現れず、娘は「お父さんなんていない嘘つき」と同級生たちに笑われる。 問いただす彼女に、彼は軽蔑の眼差しで小切手を投げつける。 「娘は俺の子じゃない。俺たちは仮の夫婦にすぎない。くだらない駆け引きはやめろ」 彼は知らない。娘こそが、自分の実の子であることを。 それでいい。 手術が終わったら、彼女は娘を連れて、二度と彼の世界に現れることはないのだから。
