姫宮ルミの小説・書籍全集
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崖の上の薔薇は、冷たく咲く
「パパ、私はルカと別れて、最強のマフィア『綾小路』家と政略結婚してもいいわ。あの残忍で冷酷な後継者と結婚するの」 神城イヴはバスローブを大きくはだけ、首筋には曖昧なキスマークが散らばっている。 「でも、ひとつだけ条件があるの。パパがそれを受け入れてくれるなら、私は嫁ぐわ」 電話の向こうで父親が興奮して何かを問いかけたが、神城イヴは「パチン」と電話を切った。 沙羅場ルカがバスルームから濡れた髪をタオルで拭きながら出てきて、神城イヴの腰を抱いてベッドに倒れ込む。 神城イヴは彼の胸元に顔を埋めながらも、その目は冷たく光っていた。 彼女は神城家の令嬢で、その正体を隠して、組の若頭である沙羅場ルカと5年間恋人として付き合ってきた。 三日前、神城イヴは誘拐された。誘拐犯はルカの貨物を狙い、彼女を人質に取って脅してきた。彼女は一晩中沙羅場ルカに電話をかけ続けたが、バッテリーが切れて電源が落ちるまで、彼は一度も電話に出なかった。 彼女は崖から突き落とされ、全身傷だらけで倒れていたところを、家族の首領に救われて、命を取り留めた。 その夜、沙羅場ルカは神城イヴの父の隠し子と月明かりの下で逢引していた。 神城イヴはすべてを悟った。沙羅場ルカへの未練も、今日で終わり。プロポーズされたその日、彼女が用意していたのは——別れという名の贈り物。 それは、彼にとって最も残酷で、いちばん優しい「自由」だった。