近藤 久美の小説・書籍全集
彼の結婚式、彼女の完璧な復讐
血まみれの神崎依央を路地裏で見つけた私は、彼を兜町の王に仕立て上げた。 全てを教え、帝国を与え、秘密の夫にした。 彼は私の最高傑作だった。 しかし、彼の新しい恋人であるインフルエンサーの女が、私に一本の録音データを再生して聴かせた。 私が丹精込めて創り上げたあの声が、私のことを「看守」だの、「足枷」だの、「俺を自分のものだと思い込んでるババア」だのと呼ぶのを、私は聞いた。 だが、それはほんの始まりに過ぎなかった。 彼は私が与えた権力を使い、私たちが死産した娘、希(のぞみ)を偲んで建てた小児がん病棟を、跡形もなく破壊した。 そして、その瓦礫の上に、新しい恋人への贈り物として高級スパを建設していたのだ。 彼は私の目の前に立ち、こう言い放った。 「お前が仕事に狂ってさえいなければ、希は今も生きていたかもしれない」 私がゼロから育て上げた男が、私たちの歴史の全てを、死んだ我が子さえも消し去ろうとしていた。 私を焼き尽くした灰の上に、新しい人生を築けるとでも思ったのだろう。 だから、彼らの結婚式の招待状が届いた時、私はそれを受け入れた。 男を完全に破滅させる前には、完璧な幸福の一日を与えてやるのが礼儀というものだから。
彼の嘘に捧げた三年、愛人の逆襲
3年前、彼は記憶を失った。彼女はその3年間、献身的に彼の世話を続け、誰にも言えない「愛人」としてそばにいた。 ところがある日突然、彼が実は記憶を失っていなかったことを知ってしまう。さらに、彼と本命と呼ばれる女こそが、自分の父を死に追いやった真犯人であることも――。 彼女は胸の痛みに耐えながら証拠を集め、2人の結婚式当日、彼らをそのまま牢獄へと送り込む。 その時になってようやく、彼は気づく。本当に愛していたのは、最初から彼女だったのだと。 だが――遅すぎた愛情など、雑草よりも無価値。彼女はとっくに、彼を捨て去っていた。
