新たな季節がやってくる。 春、新入生を迎え入れるその時期に、片想いの相手へと告白をした。 ちぐはぐな告白はかわされ、曖昧な返事を返されて有耶無耶にされる。 半ばキープされるような状態の日々を過ごした間、心は次第にぼろぼろになり、解放されたい気持ちに変わってしまった。 一途に想ってもそれは無駄と悟り、傷付きながらも絶交を切り出す。 一時は愛を届けた相手に自らその言葉を口に出すことはとても胸が締め付けられ、涙が何度も頬を伝い、立ち上がる事は出来ずに、それでも生きるために、前に進むために時間は僕を立たせる。 「また三年のまゆみ先輩に告白して降られた奴が居るらしいぜ」 「誰なんだろうな。そんな身の程知らずはさ」 教室で匿名の誰かの噂が流れる。 「な、工藤、工藤、あれ、話聞いてんのか?」 同じクラスの男子が話しかけてきたが、あまりそういう気分ではなかったために、肘を付けて窓の外を眺めていた。 「んだよ、可愛い新入生の話をしようと思ったのによ」 それに耳を傾けるだけの余裕は無く、ビターチョコを一粒齧る。 鼻腔を擽るカカオの香りと、苦さを味わいながら、間の抜けた返事を返していた。