星影の麒麟の小説・書籍全集
去り際の身代わり、/還りて愛を喰らう
実家を守るため、彼女はある男の「秘書」兼「愛人」として、3年間を捧げてきた。 彼女の仕事ぶりは完璧で、常に分をわきまえ、すべてを心得ていた。 だが、ある日のこと。 彼が長年想い続けてきた「初恋の人」と婚約するというニュースが飛び込んでくる。 彼女は決意する。「こんな愛人役、もうこっちから願い下げよ」 彼女は愛人の座を捨て、上司である彼に辞表を叩きつけると、お腹に宿った小さな命を隠して姿を消した。 それから、5年後。 彼女は総資産数百億を誇る巨大財閥のCEOとして、華麗なる変身を遂げていた。無数のフラッシュを浴びながら、彼女は不敵に宣言する。「3年以内に、あの男の会社を私が買収してやるわ」 世間はそのあまりに大胆不敵な発言に騒然となった。 しかし、人目のない場所では――。 かつての上司であるその男は、彼女を壁際に追い詰めると、愛おしげに唇の端に口づけを落とした。「君が望むなら、会社ごと全部君のものだ。結婚の『持参金』として受け取ってくれるかい?」 「……お願いだ。今度こそ、俺を置いていかないでくれ」
