桜庭柚希の小説・書籍全集
望まれない番は秘密の白狼
十年もの間、私は力なきオメガとして生きてきた。唯一の喜びは、聡明な娘、美月の存在だけ。一族の敵から彼女を守るため、私は自身の本当の姿――強大な力を持つ白狼――を封印した。美月が誰もが羨む国際超常存在評議会でのインターンシップを勝ち取った時、私たちの静かな生活はようやく安泰だと思った。 だが、その一週間後。私は学校の片隅で、ぐったりと倒れている娘を見つけた。彼女の肌を焼く銀のロープで、手足を縛られて。彼女の夢は、私たちの一族のアルファの娘、麗奈によって無残に引き裂かれようとしていた。 「この雑魚が、私の席を奪えると思ったわけ?」 麗奈は嘲笑う。 「アルファである父様が、私のために確保してくださったインターンの席をね」 私の世界は、音を立てて崩れ落ちた。そのアルファとは、私の夫、蓮――十年来の運命の番。聖なる絆を通じて彼に助けを求めたが、彼は甘い嘘で私のパニックをあしらった。麗奈たちが私たちの子供を遊び半分に拷問しているのを、ただ見ているというのに。 決定的な裏切りは、彼の愛人、亜矢子が「アルファの番」のカード――蓮が彼女に与えた「私」のカード――を見せびらかした時に訪れた。彼は現れるや否や、皆の前で私のことなど知らないと言い放った。その罪は、私たちの絆を粉々に砕け散らせた。彼は私を侵入者と呼び、配下の戦士たちに罰を与えるよう命じた。彼らが私を膝まずかせ、銀で打ち据える間、彼はただそこに立って見ていた。 だが、彼らは皆、私を侮っていた。私が娘に渡した護り石のことも、そこに秘められた古の力のことも知らなかった。最後の一撃が振り下ろされた時、私は隠された通信経路である名前を囁き、一族が数世代前に交わした誓約を発動させた。数秒後、軍用ヘリが建物を包囲し、最高評議会直属護衛隊が部屋になだれ込み、私に頭を垂れた。 「ルナ・葉月様」 隊長が宣言した。 「最高評議会直属護衛隊、ただいま馳せ参じました」
兄嫁に囚われた人を愛した九年
彼女は999回目となる膝立ちで彼の両脚の間に身を寄せ、ぎこちない唇と舌で“世話”をしていた。 情が高まったその時、彼は彼女を突き放し、車椅子を揺らしながら浴室へと入っていった。 口の中で彼はかすかに呟いた。「お義姉さん……」 彼女はもう慣れきっていて、そのまま湯薬を取りに向かう。 9年間追い続けてきた相手――冷ややかな性格であることは重々承知していた。 薬を運んできたとき、寝室の扉が半端に開いているのに気づく。 入口には車椅子が置かれ、そこには誰もいない。 中では、彼がひとりの女を胸に押しつけ、目を潤ませながら耳元で囁いていた。 「君は僕のものだ。最初から僕のものであるべきだった!」 「互いに支え合ってきたからこそ今がある!」 「結ばれないために、ずっと車椅子に座り続けていたんだ。僕の気持ちにまだ気づかないのか!?」 彼女は呆然とし、頭の中で何かが炸裂する。 その女は――彼の兄嫁。 彼より2歳年上で、豊かな胸とくびれを持ち、10年間も未亡人として過ごしてきた人だった。
