苺島いちごの小説・書籍全集
破滅の裏切りを断ち切り、新たな生を掴む
婚約者の藤堂蓮と私は、十年も一緒にいた。 高校時代から私の世界のすべてだった彼と、ついに結婚する。 そのために、私自身がデザインしたチャペルの祭壇に、今、立っている。 けれど、私たちのウェディングプランナーであり、司会を務める早坂玲奈が蓮に向かってこう尋ねた時。 「藤堂蓮さん、あなたは私と結婚してくれますか?」 彼は、笑わなかった。 ここ何年も見たことのないような愛に満ちた瞳で彼女を見つめ、そして言ったのだ。 「はい、誓います」 彼は私を祭壇に一人置き去りにした。 彼の言い訳? 玲奈は、脳腫瘍で死にかけている、と。 その後、彼は私に、彼女を救うために希少な血液型である私の血を提供するよう強制した。 彼女の残酷な気まぐれをなだめるために、私が愛した猫を殺処分させた。 さらには、水に溺れる私を通り過ぎ、彼女を先に助け出すために、私を見捨てた。 彼が最後に私を見殺しにしたのは、玲奈がわざと私の食事に入れたピーナッツのせいで、私がアナフィラキシーショックを起こし、キッチンの床で窒息しかけていた時。 彼は私の命を救う代わりに、仮病の発作を起こした彼女を病院に運ぶことを選んだ。 ようやく、理解した。 彼はただ私を裏切っただけじゃない。 彼女のためなら、私を殺すことさえ厭わないのだ。 一人、病院で回復していると、父から常軌を逸した提案の電話があった。 謎に包まれたIT界の大物CEO、有栖川暁との政略結婚。 私の心は、もう死んで、空っぽだった。 愛なんて嘘っぱちだ。 だから、父が「新郎を代えるというのはどうだ?」と尋ねた時、私は自分でも気づかないうちに、こう答えていた。 「はい。彼と結婚します」
私が死んだ日、彼は笑っていた
息子が高熱を出したあの日、夫は“本命”の娘を連れてディズニーへ花火を見に行った。 彼は電話越しにうんざりした声で言い放った。「熱が出たくらいでいちいち電話するなよ。病院くらい自分で連れて行け。」 仕方なく、私はひとりで子どもを抱えて病院へ向かおうとした。だが、マンションの門を出たところで、通り魔に無差別に襲われ、命を落とした。 警察から彼に連絡が入った。「身元確認のため署までお越しいただけますか。」 彼は冷笑を浮かべて言った。「またあいつの茶番か。こんな手まで使って俺を戻らせようなんて……バカげてる。」 その後、私の死を知った彼は、まるで愛妻家のように振る舞い、周囲に取り繕い始めた。 だが私は――彼の本当の目的に気づいてしまった。
