茂木 千聖の小説・書籍全集
彼のポーンから女王へ
神宮寺詩音、政界の名門に生まれた反逆のジャーナリスト。 唯一の逃げ場所は、一条怜との禁断の情事だった。 氷と理性でできた彫刻のような、冷徹なCEO。 彼は私を「美しい破滅」と呼んだ。彼のペントハウスの壁に閉じ込められた嵐、それが私だった。 でも、私たちの関係は嘘で塗り固められていた。 彼が私を「手懐けよう」としていたのは、別の女への恩返しのためだったと知ってしまった。 その女、白石華恋は、父の首席秘書官の娘。病的なほどか弱く、怜は彼女に返せないほどの恩義を感じていた。 彼は公の場で彼女を選び、私には見せたことのない優しさで彼女の涙を拭った。 彼は彼女を守り、擁護し、私がゴロツキに追い詰められた時でさえ、私を見捨てて彼女の元へ駆けつけた。 究極の裏切りは、彼が私を留置場に放り込み、暴行させたこと。「思い知らせる必要がある」と、蛇のように冷たい声で囁きながら。 そして、交通事故の瞬間、最後のとどめを刺された。 彼は一瞬の躊躇もなく華恋の前に身を投げ出し、その体で彼女を庇い、私をたった一人、迫りくる衝撃に晒した。 私は彼の愛する人ではなかった。切り捨てるべき負債だったのだ。 病院のベッドで、壊れた体で横たわりながら、私はようやく悟った。 私は彼の美しい破滅なんかじゃなかった。ただの道化だった。 だから、私にできる唯一のことをした。 彼の完璧な世界を焼き尽くし、私に平穏を約束してくれた心優しい億万長者からのプロポーズを受け入れ、新たな人生を歩み始めた。 私たちの愛の燃え殻を、置き去りにして。
