野苺ののかの小説・書籍全集
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乞食のふりをした将軍が、私を奪いに来た
かつての恋人は、最高位の試験に首席で合格した直後、私を振り捨て、権力を握る姫君の側近へと身を投じた。 姫君は、彼の心がまだ私に残っていることを妬み、多くの人々が見守る中、私に娼婦になるよう強要した。 無数の嘲笑と罵声が私を襲い、生きる望みすら絶えかけたそのとき―― ひとりの乞食が、私に手を差し伸べた。 「死ぬな。俺が、お前を引き取ろう」 彼のぼろぼろの長衣が、私の身体を覆う。そして彼は私を連れ去ってくれた。 高台に座した姫君は、皮肉な笑みを浮かべて言い放つ。「落ちぶれ女と乞食、まさにお似合いね」 それを聞いた彼は、私を強く抱きしめ、静かに囁いた。 「次に戻ってくるときは、あいつらの首を、お前への婚礼の贈り物にしてやる……」 私はそれを、ただの慰めの言葉だと思っていた。 だが――彼は銀の甲冑に身を包み、十五万の軍勢を率いて、本当に帰ってきたのだった……。
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高温末世、私だけが生き延びる理由
私は養子だった。恩を返すため、ずっと実の両親とは関わりを絶っていた。彼らが亡くなり、遺産を残したときも、それすら受け取らなかった。ただ、育ての母を悲しませたくなかったから。 やがて、灼熱の終末が訪れる。 家族は弟の妻のために、「男児が生まれる」という怪しい民間薬を用意していた。 だが弟の妻は、その怪しげな薬に顔をしかめていた。 私はそれを見て、「こんな時期に子どもを産むのはよくない」とさりげなく口にした。 弟の妻はそれを聞いて、薬をこっそり捨てた。 終末が訪れてから、1週間も経たないうちに人工降雨が実施される。 家族はそれで「もう大丈夫」と勘違いした。 そして彼らは、弟の妻が私の言葉で薬を捨てたことを知る。 「家系を絶やした」と、私を非難した。 ついには私を家から追い出した。 そして私は——焼けつくような暑さの中、命を落とした。 ……二度目の人生。私は莫大な遺産を受け継ぎ、 それを使って完璧なシェルターを作り上げた。 今度は、彼らが見る番だ。冷房の効いた部屋で、涼しげに料理を食べる私の姿を。 私は彼らを、見送るだけだ。