風の詩の小説・書籍全集
昨夜の相手は、/義兄でした。
婚約者の裏切りを知った彼女は、その腹いせにハンサムな男性モデルを自宅へと連れ帰った。 翌日の家族の宴席で、彼女はその傲岸不遜な男性と再会し、きびすを返して逃げ出そうとする。 だが、彼は彼女の前に立ちはだかり、意地悪な笑みを浮かべて言った。「義妹殿、どちらへ?」 その後、彼が彼女の部屋へ足繫く通う姿が目撃され、ある者が恐る恐る尋ねた。「“四男様”、まさか本気になられたのですか?」 彼は顔も上げず、鼻で笑って言い捨てた。「ただの遊びだ」 やがて、周囲の誰もが二人の関係は潔白だと信じ込むようになった。 だが、彼女だけは知っていた。彼が銃弾の雨を潜り抜け、ただ彼女の結婚式に駆けつけるためだけに来たことを。純白のウェディングドレスに身を包んだ彼女を壁に強く押し付け、充血した目でこう問い詰めたことを。 「本当に、俺の弟に嫁ぐつもりか?」
