香月紘大の小説・書籍全集
永夜に捧ぐアヴェ・マリア
セリナは、マフィアファミリーの私生児であるカイアス・カポネ氏に10年間仕えていた。 しかし彼が実権を握った日、一族の者たちは別人を「教母」と呼んだ。 カイアス・カポネ氏の血に濡れ銃を握る手は、一人の清純な美人を抱きしめていた。 「セリナ、俺を責めないでくれ。君は高等教育を受けていないし、奔放すぎる。マフィアの『教母』にはふさわしくない」 「シロデは君とは違う。彼女は高貴な生まれで、楽団の第二ヴァイオリン首席でもある。 君は名分がなくとも私についてこられるが、彼女はそうはいかない」 セリナは騒がず、振り返って立ち去った。 カイアス・カポネ氏は知らなかった。彼女が最も強大なマフィアファミリーの王女であり、シロデ様が所属する楽団の第一首席でもあることを。 メネスヴァ家はセリナが愚行に走っていることを知っており、とうの昔に彼女のために男を用意していた。 カイアス・カポネ氏が必死に取り入ろうとしている武器商人が、彼女の婚約者になろうと躍起になっている。
