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捨てたのは私の方なのに。~土下座して縋る傲慢CEOの歪んだ求愛~

捨てたのは私の方なのに。~土下座して縋る傲慢CEOの歪んだ求愛~

5.0

藤原美月が西園寺颯真を10年間愛し続けていたことは、誰も知らない秘密だった。 対して、西園寺颯真の心に忘れられない女性がいることは、誰もが知る事実であった。 3年前、実家である藤原家の財政危機を救うため、美月は利益との交換条件として西園寺家へと嫁いだ。 しかし、名ばかりの妻として過ごした3年間は、彼女の颯真に対する愛情を完全にすり減らしてしまった。 そしてついに、彼の想い人が戻ってくるという知らせを耳にした時、美月は離婚を切り出す。 離婚後、美月はもう彼を歯牙にもかけない。 一方で、激しい後悔に苛まれたのは颯真の方だった。彼女の行く先々でその姿を追い求め、彼は懇願する。 「美月、俺のそばに戻ってきてくれ」 だが、すべてはもう遅すぎた。

目次

捨てたのは私の方なのに。~土下座して縋る傲慢CEOの歪んだ求愛~ チャプター 1 彼は不能

東陵グループ、社長室。

「藤原さん、私、西園寺社長の子を妊娠したの」

トップ女優の久我友紀は、手にしていた妊娠検査の診断書を藤原美月の目の前に投げつけた。

その言葉を聞いても、美月は顔も上げず、淡々と言い放った。「あなたで42人目よ」

友紀は一瞬ぽかんとし、すぐには言葉を返せなかった。

「な……。なんですって?」

美月は落ち着き払った様子で顔を上げると、手に持っていたペンを机で軽く叩いた。

「私を訪ねてきた女は、あなたで42人目。西園寺家に嫁ぎたいのかしら? あなたのやり方、まだ少し甘いわね」 美月は手元の診断書に目を落とし、鼻で笑った。「この手の芝居はもう飽きるほど見てきたけれど、あなたの演技、お粗末ね」

友紀は二度も主演女優賞に輝いた大女優だ。「演技がお粗末」だなど、屈辱以外の何物でもない!

「美月、私のお腹にいるのは間違いなく西園寺颯真社長の子よ! その辺にいる女たちと一緒にしないで!あなたのその席は、いずれ私のものになるわ!」

友紀は怒りに震えて拳を握りしめたが、美月は相変わらず意に介さない。まるで、拳を綿に打ち込んだような気分だった。

美月は椅子に深く背を預けた。こんなやり取りには、もう嫌というほど慣れてしまっていた。

颯真と結婚して3年。彼の数々のスキャンダルや女たちの後始末してきたおかげで、対応の腕ばかりが上達していく。

それが忘れられない初恋の相手だろうが、情熱を燃やした相手だろうが、彼女の前では皆、引き下がるしかなかった。

西園寺夫人の座に座り続けて3年。この地位を誰かに譲るつもりなど、毛頭なかった。

「お話はそれだけ? 久我さん、こんな大々的に東陵グループまで私を訪ねてきて、明日のトップニュースになるのが怖くないのかしら?」

美月は平然とした表情で友紀を見つめた。

友紀は美月の言葉に一瞬言葉を詰まらせた。彼女は公人であり、評価も非常に高い女優だ。颯真が美月に喧嘩を売るだけの後ろ盾を与えていてくれなければ、自分のキャリアを賭けるような真似はしなかっただろう。

友紀はあたりを見回し、監視カメラがないことを確認すると、颯真からかけられた言葉を思い出し、再び強気な態度を取り戻した。

「美月!西園寺夫人の座が手に入るなら、女優の名声なんて惜しくないわ! それに――あなたは西園寺社長と結婚して3年も経つのに子供ができないんでしょう?少しは自分の欠陥を疑ったらどうなの? 私は彼と付き合って、たった一ヶ月で妊娠したのよ。物分かりがいいなら、さっさと離婚しなさい。それがあなたのためでもあるんだから!」

友紀は美月を真っ向から見据えた。美月の心が少しも揺るがないとは信じられなかった。

本来の計画では、今頃美月は逆上して取り乱しているはずだった。

しかし、彼女は終始平然としており、何の隙も見せない。

こんな展開では、颯真にどう報告すればいいのか?

すると、美月はただふっと鼻で笑い、眉を上げた。「久我さんが本当にその子を産みたいのなら、どうぞ。西園寺家には隠し子の1人や2人、養う余裕くらいありますから」

「隠し子」という言葉を、美月は極めて平淡に、しかしことさらに耳障りな響きで口にした。

友紀はその言葉に喉を詰まらせ、しばらく口を開くことができなかった。

美月は立ち上がるとデスクを離れ、ゆっくりと傍らのコートを羽織った。「颯真がどんな男かは、私が一番よく分かっているわ。ここ数年、面倒事を持ち込まれたのも一度や二度じゃないもの。でも、次に私に離婚を迫るなら、もう少しマシな手口を考えてちょうだい」

「お引き取りを。それとも、秘書に送らせましょうか?」

美月はわずかに顎を上げ、友紀に退室を促した。

美月のあまりに落ち着き払った態度に、友紀が用意していた台詞も演技プランも、すべて吹き飛んでしまった。

(どうして……。この女、少しも怒らないの?)

世間では、颯真と美月の夫婦仲は冷え切っており、互いに干渉しない仮面夫婦だと周知されている。

しかし、たとえ仮面夫婦だとしても、旦那の「愛人」を前にして、何の反応も示さないなんてことがあるだろうか?

それとも、本当に慣れてしまったというのか?

同じ女として、友紀はふと美月に同情を覚えた。

「ねえ、愛のない結婚を本当にこのまま続けられるの? それとも、お金のためなら何でも受け入れるってわけ?旦那の隠し子を育てることになっても、構わないって言うの?」

友紀は美月を激しく睨みつけながら言い放った。

美月はソファへ歩み寄って腰を下ろすと、自分でお茶を淹れ、淡々と返した。「男が浮気しようと思ったら、どうしたって止められないものよ。だから、男の愛を当てにして結婚するべきじゃないわ。彼が何をもたらしてくれるか、その利益を見るべきなの。利益だけは決して裏切らないから」

「久我さんは芸能界に長年いるのだから、そんな道理、もちろんご存知でしょう?」

その言葉に、友紀はその場で凍りついた。しばらく立ち尽くしていたが、やがて美月を憎々しげに一瞥すると、テーブルの上の診断書をひったくった。「西園寺夫人の座、必ずあなたから奪ってみせるわ!」

捨て台詞を残すと、彼女は踵を返してドアを押し開け、去っていった。

美月は友紀が去った方向をしばらく見つめていた。コーヒーカップを握る手は微かに白く強張り、目の奥が熱く潤んでくるまで、その視線を外すことはなかった。

今の美月の顔には、先ほどまでの冷静さはなかった。その瞳の奥には、隠しきれない自嘲の色がにじんでいた。

「隠し子を育てることも構わないのか?」友紀の言葉が頭の中で何度も繰り返される。

もちろん、平気なはずがない。

だが、彼女にどんな選択肢があるというのか。

彼女は颯真と共に育ち、彼に恋焦がれてきた。ずっと彼の背中を追いかけ、その視界に入り、自分を見つめてほしいと願い続けてきたのだ。彼と一緒にいたい一心で、最も不得意な広報学を専攻し、家族の反対を押し切ってまで、西園寺家との政略結婚に固執した。

西園寺家を支えるため、昼夜を問わず仕事に没頭し、颯真の冷え切った心を温めようと努めてきた。

しかし、結婚して3年。彼女が得たのは、彼の鳴り止まない彼のスキャンダルと、数え切れないほどの愛人たちからの挑発だけだった。

彼と顔を合わせる回数は指で数えるほどしかなく、会えたとしても、向けられるのは限りない冷淡さと無情な言葉。夫婦の営みでさえ事務的で、型通りのものだった。彼が子供は欲しくないと言うので、彼女はずっと避妊薬を飲み続けてきた。

この3年間、彼女はまるで道具だった。西園寺家の体面を保ち、彼の性的な欲求を処理するための道具。

失望は幾度となく積み重なった。それでも、幼い頃に抱いたあの淡い恋心が彼女を突き動かし、彼からは離れられなかった。

深く息を吸い込み、美月は胸に込み上げる苦い思いを無理やり飲み込んだ。感情を押し殺すと、静かに階下へと向かった。

彼女がロビーに降り立つと、待ち構えていた記者たちが一斉に彼女を取り囲んだ。

「出てきたぞ!藤原美月だ!」

記者たちのマイクが、今にも美月の顔に突き刺さらんばかりに迫り、フラッシュの光が激しく明滅する中、容赦のない質問が次々と浴びせられる。

「藤原さん、最近、西園寺社長と女優の久我友紀さんの熱愛の噂、ご存じですか?」

「友紀さんはすでに西園寺社長のお子さんを妊娠し、そのまま結婚するのではないかとの見方もありますが、この件について一言いただけますか?」

「ご家族のために我慢されるのか、それとも西園寺社長との離婚を選ばれるのか、お考えをお聞かせください」

「西園寺社長とご結婚されて3年になりますが、いまだお子さんがいらっしゃらないことから、不妊ではないかという声も出ています。この点については事実なのでしょうか?」

「西園寺社長との夫婦関係は、すでに破綻していると考えてよろしいのでしょうか?」

「藤原さん、一言いただけませんか?」

美月は唇を固く結んだまま、口を開こうとしない。

次から次へと投げかけられる質問は、どれも鋭利な刃物のようだった。

まるで、美月の傷口に塩を塗り込むかのように。

もとから苛立ちを抱えていた彼女の心は、この瞬間、一気に燃え上がった。

この3年間、颯真のために、何度こうした不祥事の火消しに奔走してきたことか。

しかし、颯真は少しも自重しようとしない。それどころか、こうした騒動を利用して彼女を離婚に追い込もうとしているのだ。

今朝、共通の友人のSNSで目にした投稿が頭をよぎる。颯真の忘れられない女性――橘千夏が帰国した。

(これこそが、彼がなりふり構わず私との離婚を急ぐ理由なのね?)

友紀が会社へ乗り込んできた情報も、彼がマスコミにリークしたに違いない。

颯真の差し金がなければ、これほど多くの記者が東陵グループの敷地内でこれほど好き勝手できるはずがない。

しかし、なぜ?

(私が正真正銘の西園寺夫人なのに、どうしてこんな屈辱を味わわなければならないの? 誰も彼もに、離婚を強いられて……)

美月は拳を固く握りしめた。心の底に押し殺してきた感情が、この瞬間、ついに決壊した。

心の奥底に隠してきた屈辱と苦しみ、そして友紀に浴びせられた言葉の数々。それらが蜘蛛の巣のようにまとわりつき、彼女の心臓を締め付け、息もできないほどに追い詰めていく。

不意に、彼女は顔を上げた。最も近くにいた記者を真っ向から見据えると、艶然と微笑んでみせた。

「颯真は精子無力症なの。そのうえ5分も持たない役立たずよ。浮気の心配をするくらいなら、むしろ寝取られて私に恥をかかせないか心配した方がマシだわ」

この噂を流したのが彼だというのなら、その報いは自分自身で受けてもらうまで。

それはあまりにも予想外の告白だった。

その場の空気が凍りついたように静止した。

(そんなこと、言っていいのか……?)

(精子無力症?)

(5分ももたない?)

(我々にそこまで言っていいのか……?)

一瞬の静寂の後、記者たちは我に返ったように猛烈な勢いでシャッターを切り、美月が車に乗り込んで会社を去る姿を次々と撮影した。そして、このニュースは瞬く間にトレンドのトップに躍り出て、爆発的な注目を集めた。

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更新: チャプター 20 怒り   今日09:09
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