「このブローチのデザイナーが、今回のコンペティションでチャンピオンであるのは至極当然、明らかだな」
合意に達した4人の審査員全員は、何も発言しない審査員の1人ビクターにジロッと視線を向けた。
「チャンピオン?」 ビクターは悠長に言った。 そして淡々と、長く節のない男性にしてはきれいな指で次のページへと資料をめくった。 つぎのエントリー作品を見た瞬間、その場の誰もが息をのんだ。
なんと、つぎのエントリー者が描いたデザインは、4人の審査員が高く評価したブローチのデザインとまったく同じデザインだったからだ!
審査員の誰もが押し黙った。
エントリーしたデザイナーたちには、審査の中で何が起こったかを知る由もなかった。 エミリーを含め、デザイナー皆が、ピリピリとした空気の中で審査結果を待っていた。
ついにコンテストの優勝者が発表されるときが来た。 3位はチョウが、2位はケリーが受賞した。 この2人のデザイナーは前評判が高かったので、その結果は順当だと思えるものだった。 そうなると、いったい誰が1位を受賞するのか? 誰もが胸を高鳴らせ結果に注目した。
待ちに待った最後のデザインがスクリーンに映し出されると、会場のあちらこちらから「おぉ!」「わぁ…」という歓声があがった。
エミリーはスクリーンのそのデザインを見た瞬間、胸が高鳴った。 心臓が口から飛び出すのではないと思うほどに!
スクリーンに映し出されたデザイン はエミリーの作品だった!