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捨てられ女のガチャ婚相手は、極上胸筋の(偽)貧乏人でした。

捨てられ女のガチャ婚相手は、極上胸筋の(偽)貧乏人でした。

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入籍当日、伊藤結衣は婚約者に別の女性と駆け落ちされてしまう。 途方に暮れた彼女は、役所の抽選によるブラインドマッチングを利用し、「貧しい」運転手である神谷宗介と即日結婚を果たす。 元婚約者の現在の妻からは「貧乏人同士の結婚なんて、一生底辺のままだ」と嘲笑され、 彼女を裏切った元婚約者からも「俺に捨てられたからと自暴自棄になり、あんな男と結婚するなんていつか後悔するぞ」と偽善的に非難される。 しかし伊藤結衣は「あの立派な大胸筋を枕にして眠れるなら、百歳まで長生きできそうよ!」と冷笑して一蹴する。 周囲の誰もが、彼女は正気を失ったのだと思った。 しかし、会社が主催するグローバル式典の日。スポットライトの下、彼女が不憫に思い養っていたはずの「貧乏な夫」がステージへと上がり、片膝をついて唯一無二のダイヤモンドリングを掲げた。「愛する妻よ、ゲームは終わりだ。これからは私が君を養う番だよ」 その時初めて、ネット中が羨む「世界一の大富豪の夫を引き当てた超幸運な人物」とは、他ならぬ自分自身であったことを彼女は知るのだった。

目次

捨てられ女のガチャ婚相手は、極上胸筋の(偽)貧乏人でした。 チャプター 1 結婚当日に振られ、市役所で夫をガチャる

伊藤沙耶香は、恋人と約束していた。大学の卒業式である今日、二人で市役所へ行き、婚姻届を出すことを。

彼女は自分に自信があった。容姿は上等だし、四年付き合っている彼との関係も安定している。国から結婚相手を強制的に割り振られるような、そんな惨めな境遇に自分が陥るはずがないと信じて疑わなかった。

しかし、不幸なことに、約束の当日、彼女はあっさりと振られた。

市役所の前で散々待たされた挙げ句、沙耶香はついに歯ぎしりしながら毒づいた。「あのクズ!気が変わるならもっと早く言えばいいものを。よりによって市役所の前まで来て、電話一本でドタキャンするなんて!」

もし一日でも早く知らされていれば、この絶世の美貌をもってすれば、現場で抽選して相手を選ぶなんて悲惨な事態にはならなかったはずなのだ。

少なくとも、そこそこの条件の同級生を捕まえて、登録を済ませるくらいの余裕はあっただろう。

それにしても、現場の抽選で、格好よくて性格も優しい家庭的な良い男を引き当てる確率なんて、一体どれほど低いというのか。

カップ麺に割り箸が入っていなかったり、飲み物の「もう一本」は永遠に当たらず、宝くじを買えば「ハズレ」ばかり。そんな不運な自分が、何億分の一という天文学的な確率をくぐり抜けて、いい男に当たるわけがないと沙耶香は思っていた。

いい男なんて贅沢は言わない。

せめてDVをせず、タバコを吸わず、ハゲておらず、ブサイクですらなければ、もう神様に感謝するレベルだ。

そうこうしているうちに、抽選の締め切り時間が迫ってきた。

沙耶香は不満げに唇を尖らせ、しぶしぶ市役所の中へと足を踏み入れた。

深刻な少子高齢化に歯止めをかけるべく、政府は婚姻率と出生率を確保するための政策を打ち出している。二十二歳以上の未婚男女は結婚が義務付けられ、大学生は卒業までに籍を入れなければならないのだ。

結婚したくないのなら、毎月二十万円という高額な「独身税」を支払うことが条件となる。

未婚のまま納税もせず、国が割り当てたマッチング相手も拒否するとなれば? 大学の卒業証書は発行されず、雇ってくれる企業も現れない。それは社会的な死を意味する。

沙耶香の現在の経済状況では、これほど高額な税金を支払う余裕は全くなかった。

彼女には、卒業証書を受け取って働くという未来がある。結婚を避けるために、これからの生活を棒に振るわけにはいかなかった。

市役所の職員が、目を閉じて必死に神頼みをしている沙耶香を冷ややかに急かした。「お嬢さん、早くしてください。今すぐ引かないと、窓口が閉まってしまいますよ」

今ここで抽選機を回さなければ、システムによって強制的に番号を割り当てることになる。

沙耶香は深く息を吸い込み、震える指で自動抽選端末の画面を押した。

画面上の数字が狂ったようにスクロールする。

やがて、一つの数字でぴたりと止まった。

「おめでとうございます、伊藤沙耶香さん。当選したのは99999番のお相手です。サービスカウンターで詳細を受け取ってください。末永くお幸せに。早くお子さんに恵まれるといいですね」

担当職員が驚愕に目を見開き、信じられないといった表情を浮かべた。

これほど綺麗な連番だなんて!

容姿、学歴、能力、家柄――あらゆるステータスが最高ランクに位置する「超優れ者」でなければ、このような番号が割り振られることはまずない。

しかもこれは、滅多にお目にかかれない希少な番号だ。

職員は羨望の眼差しを隠さず言った。「お嬢さん、あんた相当運がいいよ。こんな最高の相手を引き当てるなんて!」

沙耶香はきょとんとして首を傾げた。職員が何を騒いでいるのか、いまいちピンとこなかったのだ。

本人の顔もプロフィールもまだ見ていないのに、運がいいと言われても実感が湧かない。

ただ、相手がどんな男だろうと、今の彼女にとっては二の次だった。試用期間中だった彼女は、婚姻届受理証明書さえ手に入れば正社員登用になり、十二万円の月給を支給される。

この十二万円を手にできるのは、いわば相手のおかげでもあるから、沙耶香は心に決めた。もし相手がまともな見た目の普通の人間なら、それなりに仲良くやっていこうと。

たとえ相手が貧乏でも構わない。この給料があれば、二人でカップ麺を啜って生きていくことくらいはできるのだから。

「伊藤さん、こちらがお相手の資料です。先方には既に通知が行っておりますので、待機室でお待ちください。すぐにお迎えに来るはずですよ」

沙耶香は頷き、書類を受け取った。

そこに記された名前に目を落とし、ふと動きを止める。

(この名前、どこかで見たような……)

(確か、長者番付に新しく名を連ねたあの若き大富豪も、同じ名前だった気がするのだが……)

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