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離婚届を出すと「我が一族は死別のみだ」と夫が迫る!?

離婚届を出すと「我が一族は死別のみだ」と夫が迫る!?

5.0

小島隼人は、山口七海にとって逃れられない運命の試練だった。 彼は手の届かない小島家の跡取りであり、強大な権力を握るグループのCEO。そして、七海が高校時代に密かに思いを寄せていた憧れの人でもあった。 いつか彼と一夜を共にし、契約結婚の妻になる日が来るなど、七海は夢にも思っていなかった。 しかし、隼人の心の中に深く愛する別の女性がいることは、誰もが知る事実だった。 その最愛の人が帰国した時、七海は完全に未練を断ち切り、一枚の離婚協議書を突きつける。 ところが、普段は冷酷なはずの男が激しく取り乱した。 「七海、俺に嫁いだ以上、お前は一生俺のものだ!」 「小島家に死別はあっても、離婚はない!」

目次

離婚届を出すと「我が一族は死別のみだ」と夫が迫る!? 第1章 社長と、過ちの一夜

数杯の酒を流し込んだだけで、七海の胃の奥が、焼けるように熱くなった。

全身にその熱が広がっていき、 意識までもが、どんどん朦朧としていく。

彼女は掌に爪を食い込ませながら、ふらつく足取りで必死に前へ走り続けた。

今日は、会社買収に伴う新社長就任の祝賀パーティーだった。ところが、何杯もお酒を注がれるうちに、まんまと薬を盛られてしまったのだ。

異変を察した七海は、必死の思いで会場を抜け出した。

けれど、薬の効果が回るにつれ、体の奥から込み上げる熱の波が、彼女を丸ごと呑み込もうとしていた。

ほどなくして、七海の必死の抵抗も限界を迎えた。

彼女は力が抜け、前へと倒れ込んだ。

だが、予想していた痛みは訪れなかった。

彼女の体を受け止めたのは、広くて、男の熱を帯びた胸だった。

その人物からは、ほのかな酒気に混じって、落ち着きのある清冽なウッディの香りが漂ってきた。七海はその胸に顔を埋めながら、この香りに、なぜか覚えがある、と思った。

「た、助けて……お願い……」

男が自分を引き剥がそうとする気配を感じて、彼女はますます本能的に、彼の首に腕を絡みつかせた。

七海の頭はすでに茹だるようで、まるで冷たい氷にすがりついているような心地だった。

彼女がすがりついた瞬間、男の身体がビクリと強張ったことに、七海は気づかなかった。

朦朧とした視界で、彼女はようやく相手の顔を捉えた。

男はすでにジャケットを脱ぎ、白いシャツの襟元が乱れていた。覗く胸元には、銀の細いチェーンがくぼみある鎖骨からすとんと落ちて、服の奥へと続いている。視線の先にかすかに浮かぶ、鍛え抜かれた胸筋が、妙に艶めかしかった。

そして、視線を上げた先にあった顔は——昔と変わらぬ、端正で冷たい美貌だった。ただ、あの頃の青さは消え、そこには紛れもない大人の男がいた。

深い双眸が、瞬きもせずに彼女を射抜いている。底の読めない暗い瞳は、まるで捕らえた獲物を品定めするかのようで、言い知れぬ危うさを滲ませていた。

小島隼人……

どうして彼が、こんなところに?

彼は今日の、主役じゃなかったの?

あの小島家の御曹司だ。帰国早々、彼女が勤める会社を丸ごと買収して話題になったばかりの。 買収が成功したんだから、そりゃ盛大に祝うに決まってる。

なのに、どうしてその主役が、わざわざ自分の祝宴を抜け出してきたりしたんだろう?

七海が何か考える間もなく、次の瞬間には視界がぐるんと回り——気づけば、彼の腕の中に横抱きにされていた。

ホテルの部屋、その柔らかなベッドの上に体が沈み込んだことで、七海の意識はようやく少し浮上した。

だが、間髪入れずに隼人が覆いかぶさってきた。大きく逞しい影が、息が止まるほどの圧で彼女を押さえつける。

生温かな吐息が、七海の頬を撫でる。その眼差しは鋭く尖り、掠れた低い声が落ちてきた。

「……俺が、誰だか分かっているのか」

七海は彼の顔をぼうっと見上げたまま、うわごとのように答えた。その声は、甘くとろけていた。

「あなたは、小島社長……小島、隼……」

言い終わるより早く、男の熱い口づけが降ってきた。獣のような激しさで、彼女の唇を塞ぎ、言葉ごと奪い去っていく。 節くれ立った長い指が、彼女の腰を逃がさないとばかりに掴み、獲物の逃げ道を完全に塞いでしまう。

だけど、七海にも最初から逃げるつもりはなかった。

どうせ誰かと過ごすなら、最高にイケメンで金持ちの完璧な男を選んだっていいじゃない?

それに、小島隼人みたいな雲の上の人間が、買収したばかりの子会社にいる、一介の秘書なんて気にするはずがない。——高校のクラスに山口七海という地味な同級生がいたことすら、彼は覚えていないように。

今夜限りのことだ。明日になれば、彼は帝都へ戻り、小島グループの跡継ぎとして、絶大な権力を握る小島家の御曹司に戻る。

そして彼女は、ただの秘書に戻り、この小さな会社に残り続ける。

二度と交わることはない。

一度だけでいい……自分を、許そう。

七海はそう、心に決めた。

そして、七海は勇気を振り絞ると、そっと首をもたげて、男の下唇に吸いつくようなキスをした。

その瞬間、隼人の大きな掌が彼女の腰をがっしりと掴み、容赦なく組み敷いた。

暗がりの中、秘め事はどこまでも深く、熱く、甘やかに広がっていった。

その後のことは、もう止められない奔流だった。七海は、それがいつ果てたのかさえ分からないまま、深い快楽のなかで意識を手放した……。

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