烈しくも忍耐深き愛の抱擁
番いになって、三年目の記念日。
私は、腕によりをかけてご馳走を準備した。
アルファである夫の蓮は、この三年間、まるでガラス細工でも扱うかのように私に接してきた。
私の「虚弱体質」を、その冷酷な態度の言い訳にして。
それでも、今夜こそは彼が私をちゃんと見てくれるんじゃないかって、期待してた。
でも、彼は他の女狼の匂いをまとわせて帰ってきた。
私が心を込めて作った記念日のディナーを一瞥すると、「クランの緊急会議だ」と嘘をつき、出て行ってしまった。
数日後、彼は「対外的に仲睦まじい姿を見せるためだ」と言って、私に年次祝賀会への出席を命じた。
その道中、彼は〝彼女〟からの電話に出た。
私には決して向けられることのない、甘く蕩けるような声で。
「心配するな、紗良。すぐ行く」
「君の排卵期が最優先だ。愛してる」
私が一度も言われたことのない、三つの言葉。
彼は急ブレーキをかけ、巨大な狼の姿へと変身すると、雨が降りしきる暗い道に私を置き去りにして彼女のもとへ走って行った。
嵐の中へよろめき出た私の心は、ついに砕け散った。
私は彼の番じゃない。
彼の本命が現れるまでの、ただの代用品だったんだ。
このまま雨に流されて消えてしまいたいと願った、その時だった。
暗闇を切り裂くように、ヘッドライトの光が迫ってきた。
一台の車が、私からほんの数センチのところで甲高い音を立てて止まる。
降りてきたのは、夫が子供に見えるほどの、圧倒的な力を持つアルファだった。
彼の射抜くような銀色の瞳が、私を捉える。
所有欲を剥き出しにした唸り声が、彼の胸の奥深くから響いた。
まるで、自分の世界の中心を見つけたかのように私を見つめ、
たった一言、私の人生を変える言葉を告げた。
「俺の」