栗原 愛菜の小説・書籍全集
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裏切りの指輪と、私のα
アルファの誕生日宴の夜、彼はひとりの女を連れて戻ってきた。 かつてのつがいであり、そして彼を徹底的に捨て去った女だった。 彼は世界すべてを私に差し出すように見せながら、同時にその女を狂ったように苦しめ、水牢にまで投げ込んだ。 けれど――結契の記念日、私は見てしまった。 部屋の中で、彼があの女を抱きしめ、印を刻んでいるところを。 「まさか、私の手でまた躓くなんて思わなかったでしょう? もしも“ルナ”に見つかったら、どうするの?」 「今こうしているのは、ただあんたを罰するためよ」 あの女は小さく笑い、振り返って、扉の外に立つ私を見た。 「自分のアルファが、私とベッドにいるのを見た気分はどう?」 声にはならなかったが、唇の動きがはっきりとそう告げていた。 さらに誇らしげに片手を持ち上げてみせる。 その指には、私と同じ婚約指輪が光っていた。 その瞬間、私の狼は再び苦痛に叫び声を上げ、 痛みは全身へと広がっていった。 「……おい、誰に話している?」