石川 剛志の小説・書籍全集
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病に堕ちたアルファの哀願
彼は銀毒症にかかっていた。その伴侶である私は、 このとき月光石の婚戒を打ち砕き、《伴侶契約解除申請書》を彼の顔に叩きつけた。 「私は、もうあなたを伴侶として受け入れない」 私の内なる狼は、満足げに喉を鳴らした。 彼の両目は赤く血走り、苦痛に耐えきれず膝を折る。 「……ごめん、愚かだったせいで病にかかってしまった。努力して醜くならないようにする、負担にもならない」 「どうか、どうか俺を見捨てないでくれ。すべてを捧げるから……」 彼は私の脚にすがりつき、必死に懇願する。 まるで私がいなければ生きられないかのように。 かつて誰もが畏怖し崇めた存在が、いまは地に伏して犬のように卑屈な姿をさらしている。 それでも私は彼の痛みを見向きもせず、乱暴に引きずり上げ、月の女神像の前へと連れて行った。 「契約を解く気がないというのなら……私は月神に、あなたへの祝福を取り消すよう願い出る!」