石川 剛志の小説・書籍全集
冷酷な夫に捨てられた天才妻の華麗なる逆襲
五年前、私は命懸けで炎の中から彼を救い出した。 しかし、夫は私を愛さず、命の恩人という手柄は別の女に奪われていた。 流産したばかりの夜、夫は私を土砂降りの雨の中に置き去りにした。 偽物の女からの「雷が怖い」という電話一本で。 義理の家族からは「跡継ぎも産めない役立たず」と罵られ、熱湯を被っても嘲笑されるだけ。 さらに、偽物の女の狂言を信じ込んだ夫は、建築士である私の右手首を力任せに握り潰し、実家の会社まで潰そうとした。 「自分の罪を棚に上げて、よくも手を出したな!」 十二年間の献身と、彼を救った代償が、我が子の死と砕かれた右手だった。 愛を乞うのは、もうやめた。 私は左手で離婚届を突きつけ、ずっと封印していた天才建築士としての才能を解放した。 「法廷でお会いしましょう、北条社長」
病に堕ちたアルファの哀願
彼は銀毒症にかかっていた。その伴侶である私は、 このとき月光石の婚戒を打ち砕き、《伴侶契約解除申請書》を彼の顔に叩きつけた。 「私は、もうあなたを伴侶として受け入れない」 私の内なる狼は、満足げに喉を鳴らした。 彼の両目は赤く血走り、苦痛に耐えきれず膝を折る。 「……ごめん、愚かだったせいで病にかかってしまった。努力して醜くならないようにする、負担にもならない」 「どうか、どうか俺を見捨てないでくれ。すべてを捧げるから……」 彼は私の脚にすがりつき、必死に懇願する。 まるで私がいなければ生きられないかのように。 かつて誰もが畏怖し崇めた存在が、いまは地に伏して犬のように卑屈な姿をさらしている。 それでも私は彼の痛みを見向きもせず、乱暴に引きずり上げ、月の女神像の前へと連れて行った。 「契約を解く気がないというのなら……私は月神に、あなたへの祝福を取り消すよう願い出る!」
