遠空青(Tōzora Ao)の小説・書籍全集
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彼女は娘を連れて去り、元夫は狂気に沈む
彼を追い続けて8年目、彼女は酒に酔った勢いで彼と一夜を共にした。 やがて身ごもったことで、彼はようやく結婚を承諾する。 彼女は「ついに自分の想いが届いた」と信じた。だが結婚初日、母親は彼の姪に車で轢かれて命を落とす。 翌日には、父親の命を盾に取られ、泣く泣く告訴を取り下げるよう迫られる。 その瞬間、彼女は悟った。――彼が本当に愛していたのは、ずっとその姪だったのだと。 姪に殴られて病院送りにされれば、彼は和解書にサインさせようとする。姪が父の酸素チューブを引き抜けば、彼は彼女に土下座して謝罪させようとする。 言うことを聞かなければ、すぐに離婚を口にした。 彼は思っていた。妊娠した彼女は決して自分から離れられない、と。 しかし、それは大きな誤算だった。 彼女は子を産み、娘を連れて彼の宿敵のもとへ嫁いでしまう。 その時になって初めて、彼は狂ったように悔やむ。冷徹で傲慢だった男は、地に膝をつき、哀願する。「お願いだ……もう一度、俺を見てくれ。命を賭して償うから」 けれど彼女は娘の手を引き、背を向けたまま一瞥すら与えなかった。 「――だったら、死ねばいい」