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婚約破棄された醜悪令嬢、冷酷総裁の最愛となる

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チャプター 1 断崖絶壁の絶望裏切りの婚約者

「莉泉、いい加減にしろ。死ぬふりで俺を脅す気か?」

崖の上に、怒声が落ちた。

足元の小石が崩れて、下へ吸い込まれていく。真下に広がる海は黒く、底が見えない。

莉泉は下唇を噛んだ。血の味がした。

「……あなたの目には、これが芝居に見えるの?」

三歩離れた場所に、婚約者の豊増直也が立っている。日本有数の財閥の跡取り息子だが、泥だらけの草地にオーダーメイドの革靴を踏みつけたまま、少しも気にした様子がない。

その隣には、小堀家に引き取られた義妹の川合萌香が、ぴたりと寄り添っていた。萌香は直也の肩に頭を預け、怯えた小鹿みたいな目でこちらを見ている。

唇の端だけは、笑っていた。

「お姉ちゃん、私が悪いの。私さえ帰国しなければ……。危ないから、早くこっちに来て?」

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「見ろ。萌香はこれだけお前を気遣っている。お前は嫉妬に狂って、死を盾に人を脅すことしかできんのか」

風が長い髪を払った。莉泉は震える指を萌香へ突きつけた。

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その一言が、胸の奥をえぐった。

自分の意志じゃない。誰かに盛られた薬で、こうなった。

直也は莉泉の体を一瞥すると、面倒くさそうに言った。

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「……一緒に、暮らす?」

「萌香は体が弱い。そばに世話を焼く人間が要る。彼女が実質的な正妻として俺の隣に立つ。お前が大人しくしていれば、豊増家の若奥様という肩書きだけは残してやる」

頭の中で、何かが崩れた。莉泉がふらりと後ずさると、かかとの下が宙に浮いた。

萌香が小さく悲鳴を上げて、直也の腕に倒れ込んだ。

「直也さん、頭がクラクラする……。お姉ちゃんは、やっぱり私を受け入れてくれないのね」

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直也が萌香を抱き留めて、怒鳴った。

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「謝る……?」

かすれた声だった。

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黒服が二人、崖っぷちへ走った。

莉泉は思わず体を後ろへ引いた。かかとが崖際の緩んだ土を踏み、小石がさらさらと崩れ落ちる。何かにつかまろうとしたが、次の瞬間、足元の土が突然裂けた。

「捕まえろ!」

直也の叫びが届くより早く、黒服の手は空を切った。莉泉の体は、暗い海へ吸い込まれていった。

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