虹色みおの小説・書籍全集
灰燼からの再起
幼い頃から、婚約者の橘尚哉(たちばな なおや)を愛していた。 私たちの結婚は、両家の巨大な帝国を一つにする、完璧な証となるはずだった。 前の人生で、彼は燃え盛る私のアトリエの外で、義理の妹の由梨亜(ゆりあ)と一緒に、私が死ぬのを見ていた。 煙に喉を焼かれ、肌を焦がす熱さに耐えながら、私は彼の名を叫んだ。 「尚哉、お願い!助けて!」 由梨亜は彼の腕にしがみつき、偽りの恐怖に満ちた顔で言った。 「危ないわ!あなたまで怪我をしちゃう!早く行かないと!」 そして、彼はその言葉に従った。 彼は私を最後にもう一度だけ見た。 その瞳には、どんな炎よりも心を抉る、憐れみに満ちた色が浮かんでいた。 そして彼は背を向け、私を燃え盛る炎の中に置き去りにして、走り去った。 死ぬ瞬間まで、私には理解できなかった。 いつも私を守ると約束してくれた男の子が、私が焼き殺されるのをただ見ているなんて。 私の無条件の愛は、彼が私の妹と結ばれるための、代償だったのだ。 再び目を開けたとき、私は自分の寝室に戻っていた。 一時間後には、家族の役員会議に出席することになっている。 今度の私は、まっすぐにテーブルの上座へと歩み寄り、こう言った。 「婚約を、破棄させていただきます」
運命の番アルファの隠し子――私を打ち砕く拒絶
私は、失われたはずの聖なる白狼の血脈を継ぐ者。 一族の未来のルナとなる運命だった。 私の番、アルファである戒は、魂の片割れのはずだった。 ―――あの日、彼の五年越しの秘密を知るまでは。 彼には、もう一つの家族がいたのだ。 そして、その息子の誕生日は、私の誕生日と全く同じ日だった。 ギャラリーの窓越しに、私は見た。 彼が別の女にキスをし、その子にかつて私がずっとおねだりしていた遊園地を約束するのを。 私の両親までもが、その共犯者だった。 一族の資金を横領し、彼らの二重生活を支えていたのだ。 あろうことか、私の誕生日に薬を盛って眠らせ、彼らだけの祝賀会をやり過ごす計画まで立てていた。 彼らにとって、私は娘でもなければ、番でもなかった。 ただ、正しい血を引いただけの「仮の器」。 真の後継者を産むための道具であり、用が済めば捨てられる存在。 だから、十八歳の誕生日を迎えた朝。 私は母が差し出した毒入りのお茶を飲み干し、倒れるふりをして、永遠に姿を消した。 もちろん、彼らの息子の誕生日パーティーに、特別な届け物を手配してから。 彼らの秘密を、一つ残らず詰め込んだ箱を。
もう冷めたの、あなたのこと
結婚して五年目、夫は浮気をした。相手はそこそこ有名なインフルエンサーだった。 ある日、彼の友人がこう聞いた。「もし奥さんにバレて、離婚ってことになったら?財産分与とか面倒だろ?」 彼はタバコをくゆらせながら、鼻で笑ってこう答えた。「アイツ?オレに惚れすぎてるから無理だよ。自分から擦り寄ってきた女だし、離れられるわけがない。」 でも――私が離婚届を差し出したとき、泣きながら引き止めたのは彼のほうだった。 ただ……冷めた酒は温め直せても、冷えきった心は、もう戻らない。
