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第6章プレゼンテーション

文字数:3376    |    更新日時: 22/02/2021

「そうだな」 オータムは単純に聞いただけだったが、チャールズが答えてくれたとは思っていなかった。

「従来の年会は慣例的で新味が乏しかった。 今年はシャイニングカンパニーの50周年を迎えるし、 最近幾つかの会社を買収した。 だから、ワインパーティーを開催するよりも、従業員へのボーナスにお金を使いたい」 と、チャールズは続けた。

オータムはうなずいた。 彼は夫としてはいい夫ではないが、上司としては素晴らしい男だと彼女が思っていた。

「朝食は終わったか? 会社まで送って行くよ」 オータムが箸とお椀を置いたのを見て、チャールズが聞いた。

会社まで送るって… また?

「いいえ、大丈夫よ」

「さぁ、行こう」 オータムの辞退はすぐさまチャールズによって拒否された。 彼は彼女の手を引っ張リ、車まで連れて行った。

車の中で少し休むことができると考えて、オータムは彼の好意を受けた。昨夜遅くまで起きていたため、彼女はすぐに眠りに落ちた。 会社に到着し、チャールズは彼女を起こした。

チャールズが彼女が昨日降りた場所に車を停めているのを見て、オータムは安心した。

「また、後で」 チャールズが言った。 オータムは彼の本当の意味に気づかなかった。 彼女がラップトップを手に持ちオフィスに入ると、すぐにライアン・チョウに止められた。「やっと来たな、企画はどうなってる? 相手がもうすぐ来るの…」

「チョウさん。 イェはこの会社のトッププランナーですよ。 彼女を信用してください」 オータムが何か言おうとする前にポーラ・パンが嫉妬心から言った。

ポーラはオータムよりも長年この会社に勤めている。 しかし、彼女はオータムの足元にも及ばず、 給料も今のオータムより低かった。 そのため彼女はオータムを嫌っていた。

「最善を尽くしましたが、結果を保証することはできません」 ライアンはポーラの言葉を聞いてうれしかったが、オータムの回答を聞いて不安になった。

「イェは控えめすぎるわ」 ポーラが冷笑した。

「もういい! 」 ライアンはオータムを見て、「とにかく、この件についてはお前に任せる。 真剣に受け止めるべきだ」と言った。

「わかりました」 オータムが頷いた。

9時に、オータムがまだパワーポイントを確認している間、シャイニングカンパニーのメンバーが到着した。 新人受付係が「イェさん、早く来て下さい。 シャイニングカンパニーの方々が到着しました」と、呼びに来た。

オータムは戸惑った。 彼らが到着したのなら、何故直接会議室に案内しないんだろう? しかし、受付係は彼女をオフィスから引っ張り出しながら、「さっさと行かないと、 チョウさんが 待っているわ」と促した。

ゲートでは2つのグループが並んでいた。 ライアンは彼女に手を振リ、神経質そうにコートを整えていた。 この時、いつもカジュアルな服装でいるライアンさえが、今日はスーツを着ていることにオータムは気づいた。

彼女はその場にいる人々を見回した。 皆、真剣そうな顔をしていた。 ポーラ・パンでさえ違って見えた。 彼女はいつもより… 色っぽかった。

ただの代表者じゃないの? チャールズが直接ここに来ることはないだろうとオータムは思っていた。

彼女は普段から野次馬根性ではなかったが、 今となって、その代表者は誰なのかにとても興味があった。

エレベーターのドアが開くと、紺色のスーツを着た男性とその後に数人が、クラウド広告会社の門に向かって歩いて来た。

それは… 今日彼女を仕事に送り届けた男だった。

オータムは、この件はシャイニングカンパニーのものであることを知っていたが、 年会の件でチャールズ自身が出向いてくるとは思ってもみなかった。 ライアンがとても緊張していたのも不思議ではなかった。

「ルーさん」 ライアンはすぐにその男に駆け寄り、「ようこそいらっしゃいました。 こちらへどうぞ」と言った。

オータムはチャールズが自分をちらっと見ていると感じたが、 気にしていなかった。しかし、隣に立っているポーラが興奮していた。

「なんてこと、彼は私を見ていたわ。 私を気に留めたわ!」

「パンさん、考えすぎよ」 新しい受付係のレイラ・チャンが彼女を嘲笑した。 「ルーさんは 結婚したばかりよ。 イェさんが休暇を取っていた時だったわ」

オータムがそれを聞いた時、心臓の鼓動が一瞬止まった。 もし彼らが自分はチャールズの妻であることを知ってしまったら、やばい事になるだろう。

「なんだって? 結婚したの?」 ポーラは疑いの目でオータムを見た。

もしかして、チャールズは彼女と? いえいえ、あり得ないわ。彼らの格差がありすぎよ。

チャールズが盲目でない限り、オータムとは恋に落ちないわ。ポーラはすぐにその考えを後にした。

「イェ、早くこちらへ」 後ろにいるオータムを見て、ライアンは手を振りながら、 彼女を呼んでいた。

ライアンの元に行く前に、彼女は従業員たちに注意せずにいられなかった。「こんな重要な時に、馬鹿げた噂で時間を無駄にしないで。 レイラ、お茶を用意して」

「あなた、自分は社長の妻だとでも思ってるの?」 ポーラが彼女に隠れ不平を言った。

オータムはポーラの事など気に留めず、慌ててライアンの後に続いた。 ライアンは彼女をチャールズに紹介した。 「ルーさん、彼女はイェ、当社のプランナーです。 シャイニングカンパニー年会についての責任者です」

「はじめまして、 ルーさん」 オータムは上品にチャールズに手を差し出した。 チャールズは彼女と握手したとき、彼女の掌をくすぐった。

オータムは同僚が彼女を苗字で呼んでくれることをラッキーだと思った。イェというのはイボンヌの名前を省略した呼び方だったからだ。 そうでなければ、チャールズに正体がばれる彼女は追い出されるかもしれない。

「では… 始めましょう」 オータムは考えを整理し、仕事に取り掛かった。 彼女は間違いなく仕事ではプロだった。

チャールズと彼の会社の人々の前に立ち、オータムはプレゼンテーションを始め、スムーズにアイデアを紹介し始めた。 彼女はチャールズの情熱的な目を見ないようにしていた。 PPTの画面に「終了」と表示された時、安堵の大きなため息をついた。

「ルーさん。 もし私がシャイニングカンパニーの従業員であったら、ワインパーティーの代わりに、50周年の年会で会社がある程度のボーナスを私たち従業員に与えてくれたらいいと思っています。 そのため、経費を節約するために年会を報告会にします。節減する経費はボーナスにするといいと考えていました。 従業員たちは会社の基盤ですから」 オータムがプレゼンテーションを終えたとき、チャールズに同行していた男達はお互いにひそひそ話をし始めた。 明らかに、彼らはオータムの企画にとても満足していた。 チャールズの目も賞賛の気持ちであふれていた。

しかしライアンの顔は渋かった。

彼はお金を稼ぎたかったからだ。 だから、裕福なシャイニングカンパニーが彼の元を訪れた時、大金を稼げると思ってその依頼を受けたのだ。

しかし、オータムのプランは収益をほぼ半分に減らせる。

「イェ、一体どうしたって言うんだ?」 ライアンはここにいる代表者達を気にしなかった。 彼は立ち上がリ、オータムを叱責し始めた。

「お前、知らなかったのか…」 「チョウさん!」 オータムは長年ライアンの元で働いているので、彼が収益だけしか考えていないことはよく知っていた。 だから、今のような場合では、彼女はライアンの話を遮った。 「ルーさんの意見を伺ってはいかがかしら?」

「悪くない」 チャールズは言った。「しかし、幾つかの詳細をイェさんと話し合いたい。 もう昼食の時間だ。 チョウさん、 しばらく貴社のトッププランナーをお借りしてもいいかな?」

「どうぞ、どうぞ」 ライアンが「では、昼食の手配をさせます」と笑いながら言った。

「お構いなく」 チャールズはライアンの言葉を遮った。 そして何も言わなかった。しかし、彼の意図はすごく明白だった。

彼はオータムと二人だけで昼食をとりたかったのだ。

「わかりました」 ライアンは馬鹿ではない。 彼はチャールズの意図をよく解っていた。 彼は笑顔でオータムを横に連れて来て彼女に言った。「イェ、どうしてもルーさんのお世話をするように。 ぜひ彼を喜ばせるぜ。 わかったか?」

「チョウさん、 こういう事は私の役目では…」 ライアンの言葉はあまりにも露骨で、オータムは彼にがっかりしていた。

「彼は私を何だと思っているのだろう?」

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目次
第1章わかったわ!彼と結婚するわ! 第2章契約書 第3章仕事に戻る 第4章レイチェル・バイの計画 第5章同居 第6章プレゼンテーション 第7章家 第8章一体どうしたのだ 第9章私の事、愛してる? 第10章トップ記事 第11章私をかばった夫、チャールズ
第12章初めて、シャイニングカンパニーへ
第13章忙しい?なにに?
第14章レイチェルかオータムか
第15章彼女を首にして!
第16章レイチェルからの警告
第17章ポーラのアフタヌーンティー
第18章ディナー
第19章新企画部長は誰に
第20章酔っ払い
第21章大家族でのディナー
第22章彼女の話を遮る
第23章変わったいとこ
第24章チャールズの義理宅への訪問
第25章イボンヌがチャールズを取り戻す
第26章ボーイフレンドか男娼か
第27章ルー夫人
第28章別れ
第29章ゲイリーの怒り
第30章一千万円を貸してください
第31章一緒に寝る
第32章デートの日
第33章邪魔者
第34章甘い汁を吸ったのに文句言う
第35章チャンスをくれ
第36章クリスとチャールズの対決
第37章オフィスでの冷やかし
第38章ポーラの権力闘争
第39章退職
第40章ポーラの大失敗
第41章できることは何もない
第42章ルー夫人に教える
第43章どうにもならない奴
第44章真実
第45章お前を養う
第46章オフィスに戻る
第47章彼女は戻ってこないだろう
第48章はめられる
第49章店での口論
第50章真実は勝つ
第51章偶然
第52章夫の嫉妬
第53章ロマンチックなキス
第54章リトル・イェ
第55章欲しいものを追え
第56章新人研修
第57章感謝
第58章一緒に来て
第59章秘書部内の嵐
第60章リンダの非常な親切
第61章チャールズの意図
第62章彼女は行けない
第63章ソンさん
第64章我慢
第65章明らかな嘘
第66章サムがオータムを守る
第67章まだ終わっていない
第68章公の場での発表
第69章チャールズの負傷
第70章チャールズ、病院で
第71章交渉
第72章サムとの個人面談
第73章クリスの失恋
第74章レイチェルの帰国
第75章チャールズの退院
第76章ゲイリーからのアドバイス
第77章浴室で
第78章彼女の魔法
第79章敵対的なナンシー
第80章ナンシーの謝罪
第81章辞任
第82章秘書採用中に知人が
第83章チャールズとのディナー
第84章イボンヌの意図
第85章イボンヌの提案
第86章オータムの退職
第87章再びグー家へ
第88章祖母のビデオ
第89章サム、真実を知る
第90章彼の後悔
第91章グー家での夕食
第92章言い合い
第93章オータムを送りに空港へ
第94章シンディ
第95章シンディの両親
第96章アレルギー
第97章病院で
第98章子守り
第99章ぎこちない夕食
第100章ホテルの火災
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