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いつまでも君のもの

いつまでも君のもの

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あらすじ

目次

素晴らしい結婚生活とは「完璧な二人」が共に過ごして実現するものではなく、不完全な二人がお互いの違いを楽しめるようになってこそ実現する。個性の異なる6人。共に生きることを求められた3組の不完全なカップル……。彼らの物語を見てみよう。彼らは恋に落ちるのか、果てには結婚を放棄してしまうのか? ~~~~~°~~~~~~~°~~~~~~~°~~~~~~ 冷たく無礼で傲慢なナルシスト。これが、ソフィア・イザベルが結婚相手のダニエル・ケリーに下した評価だ。過去のトラウマと正義感から、彼の不遜な性格にも関わらず彼女は結婚に同意した。最初からいがみ合っていた二人は、それぞれの利益のために結婚をせざるを得なかった。 問題は、いつまで二人が向き合えるかだ。最後には自分の気持ちを認めるのか、互いに頑固であり続けるのか。 * * * マディリン・デイビスは、何不自由ない暮らしをしながらも、彼女の「やりたいことリスト」を埋まられずにいた。ある日、CEOの個人秘書になった彼女に、無骨でハンサムな上司、ガブリエル・ウィルソンズが、人生を変える取引を持ちかけてきた。それは1年間彼の妻になるというもの。 愛のない相手と結婚するだけでも大変なのに、それが契約結婚で、しかもその理由が昔の恋人を取り戻すためだなんて。辛いだろうな。 彼の気晴らしにでもなればと思ったマディリンは結婚に同意したが、予想外なことに、彼女は彼に恋をしてしまった。 ガブリエルはマディリンの愛に応えることができるのか、それとも最初に愛した人を選ぶのか? * * * 自由奔放なアリアナ・アンジェラは、18歳になったとき、生涯で最も愚かな契約をしてしまった。それは兄の親友であり初恋の人でもあるアレクサンダー・ジョナサン・スミスの結婚だ。金持ちでハンサムな彼は、巷で有名な女たらしだったからだ。 しかし彼らがそのとき予想もしていなかったのは、婚姻届が馬鹿げた紙切れになることだけではなかった。それは彼女の心境である。夫に4年間ほったらかしにされてもなお、彼を深く愛していた。 彼が戻ってきた今、彼女は長いあいだ自分を価値のない存在のように感じさせた男を信じられるだろうか?彼女が待ち続けた数年間のように、何が起きても彼を受け入れ、愛し続けることができるのだろうか?

第1章出会い

ソフィアの視点:

腕時計を何度も確認しながら、私は長くて深いため息をついた。 もう45分近く喫茶店にいるけれど、昨日のメール相手の姿は まだちらりとも見えない。 ケリー・インターナショナル・コーポレーションのCEOであるダニエル・ケリー氏は、私の「いわゆる」婚約者だ。そして、3週間後には夫になる予定の人でもある。

彼が来週の婚約パーティーの発表前に私に個人的に会いたいと言ってきて、 私も賛成だったから、彼に会うためにわざわざ初練習の予定をキャンセルしてここへきたのだ。

これを読んでいるあなたは婚約パーティーなるものに戸惑っているだろう。 お互いを知らずに、なんならお互いを見ることさえせずに、どうやって婚約するのだろうと。 まあ、これは単なる契約上の結婚なので、お互いに親密である必要はないのだ。 1年間は結婚生活を続ける必要があるけれど、その後はまた別々の道を進むつもりでいる。

「10分。 いや、5分ね。 あと5分しても彼が現れなければ帰ろう。そして婚約パーティーまでは姿も見せないわ」 喫茶店を見回しながら、私は低く呟いた。

そして次の1分を待つあいだ、暇つぶしにイヤホンを付け直して、携帯電話でダウンロードしたダンス音楽を聴きながら、頭の中で新しいダンスのステップを延々と考えていた。

目の前に誰かが立っているのに気づいたとき、私はもう音楽に夢中でビートに乗っていた。 イヤホンを外して見上げると、そこには黒っぽいスーツを着た背の高いハンサムな男性がいた。

最初に目に留まったのは彼の瞳だった。冷たく、一切の感情も見て取れないような瞳で、 まるで心を持たない男を目の当たりにしたような心地だった。

「ソフィアさんですね」

彼の声は冷たいけれどセクシーで、私は息を呑んだけれど、 それと同時に、私の名前を呼んだその言い方に背筋が震えた。

「そうです。 あなたが ケリーさん?」

彼の目を直視したまま、私がそう尋ねて姿勢を正すと、 彼は答える代わりに向かいの椅子を引いて、そこに快適そうに収まった。その間、彼は私の目を見つめたままだった。 ちょっと変だし不気味だったけれど、私は息を止めて、彼から目を逸らしたい衝動をじっと耐えた。

「 ケリーさん、なのね?」

もう一度尋ねたのに、最初に聞いたと同じく、また答えてもらえなかった。

彼がやっと口を開いたとき、私はちょっと耳が悪いのか尋ねようとしていた。

「教えてくれ、ソフィア。 この取引を受け入れる代わりに母からいくら受け取った?」

その質問には驚いた。 そんなことを聞かれるとは思ってもみなかったからだ。 歯に衣着せぬとはまさにこれだ。 直球ストレート。 「どうも」「あのう」なんて言わずに、要点まっしぐらだった。

「え? な、なんですって?」

思わず聞いたことを確認してしまった。

「おいおい、ソフィア。 俺は、君が母から取引費用をいくら受け取ったのか知りたいだけさ」

彼のまるで汚いものを見るような目に、私は息を呑んだ。

「どうやって母を知り、母に選ばれ、この役を勝ち取ったんだ?」

質問を言い終えた彼に対して、私はすぐに皮肉を込めて笑った。

「あのう、ケリー さん? 参考までに教えてあげるわね。あなたのお母さんは、銀行口座から1円も私に渡していないわよ!」

「つまり、どういうことだ? 見返りなしで取引を受け入れたっていうのか? ああ、いい加減にしないか ソフィアさんよ。 俺はビジネスマンだぞ。騙そうったって、母のようにはいかないぞ!」

私は激怒しそうになったけれど、なんとか落ち着こうと拳を握りしめた。 お金なんかで、よくも私を侮辱してくれたわね? でも、殺意を込めて睨んだり叫んだりする代わりに、私は彼の神経を逆撫でするように にっこり笑った。

「それが私に会いたかった理由なの? ダニエル・ケリーさん。 面と向かって金儲けだと言って私を馬鹿にしたかっただけ?」

「だって… それが理由で同意したんじゃないのか? いくら必要か言ってくれれば…」

「言ってくれれば、何よ? 取引をキャンセルするってわけ?」 私はかぶりを振ってまた笑った。 「よく聞きなさい、ダニエル・ケリー! この世界の全てに値段が付いていて、ぴかぴかのカードやおズボンの中のありがたいお金で買えるわけではないのよ!」

私は彼に顔を近づけて、彼がぎょっとするところを見逃さなかった。

「あなたのお母さんは私に一銭も渡さなかった! 実際、彼女は私の助けを求めてたわよ。 1年間だけ息子のお嫁さんになってあげてほしいとね! それに、そうよ、私にはあなたと結婚しなきゃいけない理由があるけれど、それはお金なんかじゃないわ! 私と結婚したくないならはっきり言いなさいよ。決めつけて馬鹿にしたりしないで! それか、あなたがお母さんと話したらどう?この結婚にこだわっているのは私じゃないもの!」

私は立ち上がってテーブルからバッグを引っ掴んだ。でも一つ、彼に伝えないといけないことを思い出した。

「チッ。 このっ。 ああもうっ。 ダニエル・ケリー。 そうよ、あなたはハンサムで、肩幅が広くて、セクシーで、夫としては完璧な見た目をしているわ…」 彼は目を少し見開いて、 口をあんぐり開けてた。 「でもね、私気付いたの。何か分かる? あなたの見た目の良さって、態度とまるっきり反対だわ! 鼻につくのよ! 一年中、1日3回以上シャワーを浴びた方がいいわね!」

この最後の言葉に彼は驚愕していたけれど、私は彼の返事を待たずに、 口をあんぐり開けた彼を置き去りにして、喫茶店の出口につかつかと歩いていった。 これで彼が私をどう思おうが気にしない。 彼が私を契約結婚のお嫁さんにしたくないなら、それで結構。 でも、侮辱はされたくない。 たくさんの侮辱や決めつけに苦しんだ過去があるので、もう同じ思いをしたくないのだ。

車に乗り込んだ途端、窓の外では雨が降り始めて、私は深いため息をついて静かに目を閉じた。 まさに土砂降り。ぼやけたフロントガラス。 こんな大雨でも運転するほかないので、エンジンをかけた。 1時間近く待たされた結果がこれだなんて、もし分かっていたら待ったりしなかったのに。 いや、彼と会うことすら賛成するべきじゃなかった。

私が言ったことは真実だ。そう、私は取引を受け入れたけれど、それはお金のためではなく、彼の名字、その一族の名前のためなのだ。 彼の母親が契約を持ち掛けてきたとき、私には選択の余地がなくて、受け入れるほかなかったのだ。

~~~~~~~°~~~~~~~°~~~~~~~°~~~~~~~

回想:

誰かに尾行されていることに気づいたとき、私はモールの駐車場で、自分の車に向かって歩いていた。 立ち止まり振り返って、足がすくんだ。 そこにいるのが一番会いたくない男、あるいは二度と会いたくない男だなんて、信じられなかった。 過去に私の人生を台無しにした男。 ジョセフ・デ・ルカ。

「Guarda chi c'è? Finalmente ti ho trovato, Amore Mio」 (誰だと思った? やっと見つけたよ、僕の愛しい人)彼は邪悪に、にやにやしながら言った。

「愛しい人なんて呼ばないで、ろくでなし!」 鳥肌が全身を走り、私は彼に向かって叫んだ。

「エスベランテ」 彼はくすくす笑った。 「Non sei ancora cambiato. Come stai, Amore Mio??」 (威勢がいいね。 変わらないなあ。 愛しい人よ、 元気だったかい?)

「Ho detto di non chiamarmi amore, cazzo! Bastardo!」 (「愛しい」なんて口にするなと言ったのよ! ろくでなし野郎! )

彼がにっこりとこちらに向かってきたので、私は後ずさりをした。 心臓がばくばくいっていた。

「Dai, non ti manco?」 (ほら、こっちおいで、僕が恋しくないのか?)」

「Non mi mancherà mai la tua fottuta facia in tutta la mia vita!!」 (人生を通して、あんたの憎たらしい顔を恋しくなったりなんかしないわ! )

私は自分の車に向かって走った。 しかしドアを開けようとしたところで、手を掴まれてしまった。 次の瞬間には、私は車のドアに叩きつけられて、首筋には彼の唇が当たっていた。

「放してよ! この最低のろくでなし野郎! 私に触るんじゃないわよ!」 どうにか彼を押し返そうとしたけれど、彼はとても強くて、私はただ大声で叫ぶだけだった。 「助けて! 誰か来て!」 全身の力を振り絞って彼を押しのけ、なんとか平手打ちを食らわせることができた。

彼は私が手をついた場所を触ってにやにやしていたが、 たちまち悪魔のような笑みを浮かべた。

それを目の当たりにすると私は息をすることもできなかった。 ずっと会っていなかったのに、しかも広い世界の中でよりによってここカリフォルニアで彼と再会するなんて、信じられない。 イタリアはここからすごく遠いのに、なぜ運命はこいつをここに連れてきたんだろう?

「こんなに久しぶりに再会することがあるなんて、誰が予想できただろうね、アモーレ・ミオ? どうしてイタリアを去ってしまったんだい? あちこち探したんだよ。 これ、見えるかい? 覚えてるかい?」

彼は首筋にある長い傷跡を指差した。 彼は真顔になって、私は心に忍び寄る不吉な予感が大きくなっていくのを感じた。

「これがお前を探していた理由だよ! お前を見つけるためだけに、ヨーロッパ全土を周ったんだ! なのに、どうしてカリフォルニアに隠れていると教えてくれなかったんだ?」

「あんたは最低だわ! 6年前に私にしたことから逃げられると思っているのなら、大間違いよ!」

「Ohh... mia Cara Ysabelle, ma non hai prove delle tue accuse!」 (ああ、僕の愛するイザベル、君には 告発できる証拠がないじゃないか)

「そうよ、でも私は神に誓えるもの、ジョセフ! 私が確固とした証拠を手に入れたら、あなたは牢屋の中で年老いて死ぬのよ!」

「ああ… チッ。 チッ、チッ。 もう6年だよ、アモーレ・ミオ。 疲れないのかい? 昔は僕にくれなかったプレゼント、もうくれてもいいんじゃないか?」

「クソ食らえよ!」 自分を彼に捧げることを想像して、身震いがした。 「私は結婚するのよ、ふざけるんじゃないわよ!」

彼は目を細めて何か言おうとしたけれど、そのとき背後から誰かの声が聞こえて、白い制服を着た3人の男性が視界に入った。

「何が起きたの? ソフィア、大丈夫?」 ケリー夫人が こちらに向かって歩いてくる。

ジョセフは目の前にいる3人の男性を一瞥してから、私に視線を向けた。

「Non abbiamo ancora finito, Amore Mio! Quando ci rivedremo, mi assicurerò di prenderti e renderti completamente Mio!」 彼は睨みを利かせて捨て台詞を吐いていった。

「はぁ!」 私は目を閉じて、胸につかえていた息を強く吐き出した。

「大丈夫なの、ソフィア?」 ケリー夫人は私の肩をぽんぽんと叩いてくれて、私は涙目で彼女を見た。

「大丈夫です、 ケリーさん。 助けてくれてありがとう」

「でも、私は何もしていないわよ?」

「いいえ、奥様。 あの男から私を助けてくれたわ。 本当にありがとう」

「ソフィア、差し支えなければ、あれが誰か聞いてもいいかしら? そして彼は去り際になんて言ったの?」

「彼はこう言ったんです。まだ終わりじゃないからな、 次に会うときは確実に捕まえて俺のものにしてやる、って」

「なんてこと! なぜそんなことを言うの?以前あなたのボーイフレンドだったの?それとも今のボーイフレンド? でもあなたはたしか独身だったわよね?」

「ええ奥様、私は独身だし、彼は私の元カレでも彼氏でもないの。彼氏になることなんて後にも先にもあり得ないわ。 彼と付き合うくらいなら、死ぬことを選ぶわ」 私は彼女に真実を話したらどんな反応をするか確かめるように、彼女の目を見て言った。 「彼は6年前に私をレイプしようとしたの」

「ああ、神様!」 彼女の目はショックで見開かれて、私はただ彼女に悲しい笑顔を向けるしかなかった。

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