目を閉じたまま泣いていたので、婚約者がこちらを凝視していることに私は気付いていなかった。 目を開けると、ダニエルが目前に歩み寄ってきていて私は驚いたが、彼が涙を拭いてくれた。 そして、私の手を取り、会場の中心部へ私を引っ張っていった。
彼はウェイターにグラスを渡し、こちらの動きに注目している人々の前に立つと、 一言も言わずにひざまづき、その手からダイヤモンドの指輪を私に見せた。
――「一体何なの?」―― 彼の行動に対する戸惑いが続いて、私は声に出さずにそう尋ねた。
「ソフィア、俺たちは大変な物語の中にいる。だけど、君を手放したくないんだ。 今この瞬間も、この先の未来も」
――「あらあら! あなたはとんだ役者だわ、 ダニエル・ケリー!」――
「愛しい 君」